今回はバルサ加入5シーズン目となるスアレスを取り上げます。ここ最近は絶不調で年齢による限界説も囁かれていますが、今季ここまで全公式戦で16ゴール8アシスト。リーガ前半戦のクラシコではメッシ不在の中ハットトリックを達成するなど、しっかり結果を残しています。ぼちぼち調子を戻してくれるでしょう。そうでなければ困ります(笑)
バルサでの通算成績は231試合168ゴール84アシスト。1970年以降に限定すると、ゴール数はメッシに次ぐ2位です。凄い。近年のバルサ9番タイプでは唯一の成功者と言えるでしょう。(エトーも素晴らしい結果を残しましたが、9番タイプではないと勝手に思っています笑)
イブラヒモビッチなど世界的なストライカーでもフィットできなかったのに、スアレスはなぜ活躍できているのか。彼のプレーの特徴や凄みをまとめて考察していきましょう。
いつも通り、まずは彼のプロフィールからおさらいします。
★プロフィール
ルイス・スアレス(32)
ウルグアイ出身のストライカー
05年 ウルグアイのナシオナル・モンテビデオというチームでプロとしてのキャリアをスタートさせる
○オランダ時代
06−07シーズン フローニンゲンでプレー
07−11シーズン アヤックスでプレー
09−10シーズン エールディビジ(オランダリーグ)得点王 33試合35ゴール
最後のシーズンの冬マーケット(当時のレートで約30億円)でリヴァプールに移籍
○リヴァプール時代 11冬−14シーズン
13−14シーズン プレミアリーグ得点王 33試合31ゴール(ヨーロッパ・ゴールデンシュー獲得)
3年半の在籍で133試合82ゴールの活躍 ただ主要なタイトルは獲得できなかった
約8,100万ユーロでバルセロナに移籍
○バルセロナ 14シーズン〜
14−15シーズン 加入1年目からメッシ、ネイマールとのトリオ“MSN”が爆発 CL決勝でもゴールを決めビッグイヤー獲得に大きく貢献する
15−16シーズン メッシを抑えてリーガ得点王 35試合40ゴール(ヨーロッパ・ゴールデンシュー獲得)
バルサでの通算は231試合168ゴール84アシスト
契約は21シーズン終了まで
契約解除違約金は2億ユーロ
○トラブル
スアレスといえば試合中のトラブル 有名なものを簡単に振り返る
・3度の噛みつき
1度目はアヤックス時代の10年 PSV、バッカルの左肩に噛みつき7試合の出場停止
2度目はリヴァプール時代の13年 チェルシー、イヴァノビッチの腕に噛みつき10試合の出場停止
3度目は14年W杯ブラジル大会 イタリア代表、キエッリーニの左肩に噛みつき4ヶ月の活動禁止処分
これによりバルサ加入後も3ヶ月は試合に出場できなかった
・人種差別
11年マンU戦ではエブラに人種差別発言をしたとして8試合の出場停止
ただバルサ加入後は優等生?ぶりを発揮している 家族愛も素晴らしい
特徴的なゴールパフォーマンスは、家族(妻と3人の子供たち)に捧げています

★なぜバルサにフィットできた?
スアレスのプロフィールを簡単に振り返りましたが、とんでもない選手ですね。(笑) FWとしての得点数ももちろん凄いですが、問題児ぶりも異次元。
そんな彼は、なぜバルサのサッカーに完全にフィットし、5シーズン続けて活躍できているのでしょう。3つの項目に分けて考察していきます。
①バルサが待ち望んだ深みを作れる万能型ストライカー
私がスアレスの良さを最も感じる部分。それは、“バルサの攻撃に約5メートルの深み”を作ったという点です。下の図をご覧ください。

バルサが相手になると、対戦チームのほとんどは自陣に引いてコンパクトな陣形で守ります。4バックか3バック(5バック)で横幅は少し変わりますが、だいたいこんな感じ。縦幅はゴールラインから約40メートル、DFラインから最前線までは約20メートルくらいまでコンパクトに守ってくるチームもあるくらいです。
いくらボール回しがうまいバルサといえども、これではなかなかチャンスを作れません。
しかし、相手DFラインとの駆け引きがうまいスアレスの加入により、攻撃に5メートルほどの深みが生まれました。試合をよく見ていると分かりますが、スアレスは相手CBの視野から消える動きをしたり、あえてオフサイドポジションに位置取ったりして、常に駆け引きをしています。このいやらしさ、うまさが彼の大きな持ち味です。
これは、メッシやセスクの偽9番では生まれないスペースです。この動きで発生したわずかなスペースを、メッシは見逃しません。後述しますが、スアレスとメッシの相性の良さはこの点がポイントです。
この深みを作る駆け引きに加え、スアレスにはうまさ、強さ、何より決定力があります。スピードも遅くない。イブラほどの高さはありませんが、ポストプレーも得意です。本能型のストライカーと思われがちですが、彼は頭の良い万能ストライカー。このレベルの選手は世界を見渡してもなかなかいません。
②メッシとの関係
ここはみなさんご存知だと思いますが、メッシとの関係性は抜群です。上に書いたように、スアレスの存在でメッシは中央やや右の位置で前を向いてボールを扱えるシーンが増えました。
そして、メッシからすると“パスしたらしっかりゴールを決めてくれる存在”です。入団から早いタイミングでこの信頼を掴みました。今のバルサ新加入選手は、良くも悪くも“メッシに認められるかどうか”で立場が決まります。アンドレ・ゴメスやデウロフェウはそれに失敗した典型的な例です。
スアレスとメッシは、南米出身同士ということもありプライベートでも仲がいい。親友のような感じですね。一緒にマテ茶を飲んでイチャイチャしている写真は笑けてしまうほど。(笑) ピッチ内外でメッシと良い関係を築いているというのは、スアレスがしっかりフィットできた大きな要因でしょう。
③守備での貢献
ここまで攻撃面での良さばかりを取り上げてきましたが、守備での貢献度も高い選手です。単純に、GKやCBへのプレッシャー(タイミング)がうまい。バカみたいに全てのボールを追いかける訳ではなく“いける!”と思った時に強烈なプレッシャーをかけます。何もないただの相手ボールの場面から、スアレスの単独プレスでマイボールになる場面も多い。
バルサが苦手なコーナーキックの守備でもニアサイドでしっかりクリアします。全体的に見て、守備でもしっかり貢献している選手と言えるでしょう。
★代役を探すなら
こんなに素晴らしい選手ですが、もう32歳。トップレベルで活躍できるのはあと1、2年でしょう。バルサは代わりを見つけないといけません。考えられるパターンは次の3つです。
①世界クラスの即戦力を獲得する
②若手の有望株を獲得する
③メッシの偽9番
カンテラから純粋な9番が出てくるとは考えにくいです。となればこの3パターン。バルサはどうするでしょうか。
★最後に
スアレスの代役(後継者)問題を掘り下げるとまた長くなってしまうので、今回はここまでにします。来週中には当記事の続編のような形で、「スアレスの代役は? メッシの偽9番には反対」という記事を出したいと思います。
最後に一つだけ言いたい。私は今シーズン、スアレスはまだ活躍できると考えています。ここ最近のプレーは議論の余地なく酷いものです。ただ、この不調は一時的なもの。(だと思いたい) 現時点でバルサの9番ポジションに彼以外の選択肢はありません。
批判したくなる気持ちをグッとこらえて、信じて応援しましょう。もうすぐ彼の大好物クラシコです。大爆発は大一番にとっておいている。そう期待しましょう!
*ゴール数などの記録は全て2019年2月22日時点のものです。