【マッチレビュー】18〜19シーズン/リーガ第30節/ビジャレアルVSバルセロナ/4–4

スタメン GKテア・シュテーゲン DFラインは右からセルジ・ロベルト、ウムティティ、ラングレ、ジョルディ・アルバ  中盤はピポーテにブスケツ、右インテリオールにアルトゥーロ・ビダル、左にアルトゥール  3トップは右からマウコム、スアレス、コウチーニョ

両チームのスタメン

ベンチ イニャキ・ペーニャ ピケ セメド ラキティッチ アレニャー メッシ ボアテング

★試合の流れ

過密日程が続くバルサはピケ、ラキティッチ、メッシがベンチスタート。特にピケはここまでリーガ全試合フル出場でしたが、今後のために休養を選びました。CBは左利きコンビ。好調マウコムが右ウイングに入ります。

残留のためにホームで勝ち点が欲しいビジャレアル。守備時は5-3-2、攻撃時は3-4-1-2の形で試合に入ります。

○前半

前から積極的にプレスをかけるホームチーム。ただ、最初の決定機はバルサでした。3分、ビジャレアルFWトコ・エカンビのバックパスがミスになり、ボールはコウチーニョに。裏に抜け出したスアレスは相手DFと駆け引きしながらゴールに近づき左足シュート。これはGKセルヒオ・アセンホにセーブされます。

7,8分にはビジャレアルが続けてチャンスを作ります。まずはカソルラの左コーナーキックからイボーラのヘッド。これはテア・シュテーゲンがビッグセーブ。直後にはウムティティのパスミスからチュクエーゼに運ばれてGKと一対一の状況を作られますが、これもテア・シュテーゲンがセーブします。

両チーム落ち着かない開始10分でした。ブスケツは、この時点で左利きの両CB(特にウムティティ側)のつなぎに無理があると感じ、低い位置からのビルドアップでは両CB間まで落ちるようになりました。

この変化でバルサは落ち着いてボールをキープできるようになりました。すぐに得点が生まれます。

12分、長いボールキープからでした。相手陣地でボール回しをするものの行き詰まり、一度はGKテア・シュテーゲンまでボールを返します。ビジャレアルのDFラインは押し上げる。ただバルサの選手は落ち着いていました。

ラングレからスアレスへの長い縦パスが通ると、スアレスはワントラップから右サイドに大きくサイドチェンジ。この時点でビジャレアルの守備組織は崩壊していました。フリーのセルジ・ロベルトから右に開いたマウコムへスルーパス。ペナルティーエリア内に侵入したマウコムは、並走してきたコウチーニョへプレゼントパス。コウチーニョが難なく流し込み、先制点をゲットします。

16分には追加点が生まれます。相手を押し込み、左右に揺さぶる分厚い攻撃。最後は右サイド、ビダルからのクロスをフォアサイドにいたマウコムが頭でうまく流し込み、2-0。持っている男マウコム。前半だけで1G1Aです。

さぁ、これで楽になったバルサ。19分にはコウチーニョがGKと一対一のシーンを外してしまいますが、選手の動きは悪くない。しっかり主力を温存して勝ち点3をゲットだな。この時点ではそう思っていた人も多いでしょう。私もそうです。ただこの後、試合は思いも寄らない展開になります。

23分、相手のうまいビルドアップからチュクエーゼに裏を取られます。シュートは一度ポストに当たるものの、跳ね返りはもう一度チュクエーゼの元へ。今度は得意の左足で冷静に流し込み、これで2-1。守護神テア・シュテーゲンもさすがに防げませんでした。

この時間帯から、バルサDFは下がって受ける両FWを捕まえられず、簡単にピンチを作られてしまいます。ブスケツの両脇はガラガラで、ラインの統率も取れていなかった。この状況は試合を通して続きます。

詳しい問題点は、下のトピックスで図を使いながら説明します。

サポーターの声援を受けてテンション高く戦うビジャレアル。40分にはこぼれ球に反応したチュクエーゼが決定機を迎えますが、これはテアが右足に当ててセーブ。

バルサは何とかリードしたまま前半を折り返しますが、いつやられてもおかしくない状況。テア・シュテーゲン様様のファーストハーフでした。

○後半

両チーム、ハーフタイムでのメンバー変更はありません。

ただ、ビジャレアルは守備時のシステムを修正してきました。前半は5-3-2で特に中盤3枚が守りにくそうにしていましたが、後半からはチュクエーゼが右、イボーラが左に下がる5-4-1。ハッキリとした守備で狙いを速攻に絞ります。

これもトピックスで分かりやすく説明します。ただ、ビジャレアルのこの戦い方は、今日のバルサにはしっかりとハマりました。

5分、左サイド深くでボールを失ったバルサ。チュクエーゼから右サイドに流れたトコ・エカンビにボールがつながります。トコ・エカンビにラングレ、ウムティティの2人が釣られる形になり、中央ではイボーラがフリーに。テア・シュテーゲンはとっさの判断でゴールを空けて前に出ます。

狙っていたのかマグレなのか。トコ・エカンビの右足クロス(シュート)はそのままゴールに吸い込まれ、ビジャレアルが同点に追いつきます。バルサは速攻で簡単にやられてしまいました。

こうなると苦しいバルサ。16分、消えていたコウチーニョに代わってメッシがピッチに入ります。マウコムは左ウイングにポジションを移します。

その直後、メッシがまだボールに一度も触れずに逆転を許します。エルナネスのスルーパスに抜け出したイボーラの左足。テアも止められませんでした。あまりにも簡単に裏を取られての失点。スコアは2-3です。

得点が必要になったバルサはバランスを崩して攻撃しますが、なかなか効果的な場面を作れず。反対にビジャレアルは速攻から何度もチャンスを作ります。

35分、ビジャレアルに待望の追加点。メッシのスルーパスが相手に引っかかったところからの攻撃。カソルラがワンツーでうまくフリーになり、前線にボールを運びます。交代出場のバッカが左から斜めに抜け出すと、バルサDFは誰もついて行けず。バッカはGKをかわして落ち着いてゴール。2-4です。

残りは10分。バルサはこの時点で6人がイエローカードをもらうなど、内容的にも最悪の展開。さすがに敗戦か。

ドラマは残り3分に待っていました。

まずは45分、メッシが中央ゴールまで17mのフリーキックを獲得。先日のエスパニョール戦と同じような位置です。今回は壁と反対の狭いサイドに弾丸シュートを蹴り込みました。GKアセンホはノーチャンス。これで3-4。

そして48分、ラストプレーです。左コーナーが流れたところに待っていたスアレス。左足のダイレクトボレーを叩き込みました。スーパーゴラッソで同点です。何が起こったか分からないビジャレアル選手、サポーター。歓喜に沸くバルサの選手たち。このゴールと同時に試合終了のホイッスルです。

まさに理不尽。残留を争うビジャレアルにとっては悪夢でしょう。アルバロ・ゴンサレスの無駄な退場さえ無ければ。

負けなかったバルサはさすが。勝てなかったビジャレアルは…。いろんなことがあった90分でした。

いやぁ、面白かった。

★個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)

GKテア・シュテーゲン 7点

後半23分の右手一本のスーパーセーブを含めて、4度のビッグセーブ。4失点しましたが、この人に責任はありません。2失点目は読みが外れましたが、仕方ない。ありがとう、テア。

CBウムティティ 3点

慣れない右CBと言えど酷かった。体のキレも悪く、ポジショニングも全くダメ。ビルドアップでの致命的なミスもありました。頼むぞ、ビッグサム。

CBラングレ 4点

ラングレにとっても信じがたい試合だったでしょう。マッチアップしたチュクエーゼに好き放題やられてしまいました。ピケ先輩がいないとダメなのか。

RSBセルジ・ロベルト 5.5点

先制点を演出したスルーパスは見事でしたが、それ以外は平均以下。守備でも不安定なウムティティを助けるまでの働きはできませんでした。

LSBジョルディ・アルバ 5点

珍しく平均点以下。3失点目では完全に1人残ってしまい、オフサイドを取れませんでした。攻撃でも効果的な攻め上がりが少なかったのが心配。疲れが出てきているのか。

MFブスケツ 5点(後半28分OUT)

ブスケツも平均以下です。前半のビルドアップ、ポジション変更で優位性を作り出したところまではさすがでしたが…。マッチアップしたイボーラとの勝負では完敗です。今日は両脇のスペースもうまく使われました。

MFアルトゥーロ・ビダル 6点

個人のスタッツだけ見ると悪くないのですが、この試合に限ると数字に見えない守備の部分、要するにラキティッチとの差(違い)が顕著に出てしまいました。人には強いんですが、スペースを守る守備はできていなかった。改めてラキティッチの偉大さを感じた試合でした。

累積で次のアトレティコ戦は出場停止。これも痛い。

MFアルトゥール 4.5点(後半28分OUT)

今後に向けた心配要素です。研究されてきたのか、本人のコンディションの問題なのか。効果的なプレーはほぼゼロでした。

FWマウコム 7点

前半だけで1G1A。後半は消えている時間も長かったですが、スタメン起用に応えたと言えるでしょう。アピール成功です。いい笑顔が見られてよかった。

FWコウチーニョ 5点(後半16分OUT)

先制点を決めたのにも関わらず、厳しめの採点です。ただ、私たちの期待値、本来のポテンシャルを考えるとこの試合のプレーレベルで合格点は付けられません。消えている時間も長かった。マウコムはフル出場。コウチーニョは交代のファーストチョイスです。ここでも序列が入れ替わる可能性があります。

FWスアレス 8点 ★MOM

最後の同点ゴールも見事でしたが、前半の2得点はどちらもスアレスが起点になっていました。強さ、うまさはやはり別格。キレも戻ってきています。バルサにとってはこの試合の数少ないポジティブ要素です。

○交代出場

FWメッシ 7.5点(後半16分IN)

あのフリーキックで試合を一変させました。すげぇ。本当に。それまでの30分間はほとんど仕事をさせて貰えませんでしたが、やはり結果を残しました。もう一度言います。すげぇ。

MFアレニャー 6点(後半28分IN)

精力的に動きました。メッシがフリーキックを獲得したシーン。良い位置で受けてメッシにうまくフリックしました。あの働きだけで及第点は与えられます。もう少し出場時間を与えてほしい。

MFラキティッチ 6点(後半28分IN)

目立つ動きはありませんでしたが、バランスの悪い攻守を何とかギリギリで保ってくれました。この人の不在はやはり大きかった。

★トピックス

・バルサ守備の問題点

図2

まずは図を見てください。そして、箇条書きで悪い点を書いてみます。

・いつもよりDFラインの設定が3~5m低かった。
→下がって受ける両FWを捕まえきれなかった。
・両CBの距離感が遠かった。
・両CBとSBの距離感も悪かった。
・ブスケツの両脇をうまく使われた。
・前線からのプレッシングがほとんどハマらなかった。

最も大きな問題点は、DFラインが低かったことだと思います。

いつものピケ、ラングレのコンビだと、押し込んだ守備の時、特に良い時は前への意識がすごく強い。後方に大きなスペースを与えるのを怖がらず、相手FWを高い位置でしっかり潰します。ウムティティなんて特にインターセプトが得意な選手です。

ただ、ここら辺をいつもはピケ先輩が統率してくれているのか。相手2トップのスピードにビビったのか。戦術的に敢えてそうしたのか。

詳しいところは分かりませんが、シンプルにラインが低すぎて簡単に相手にスペースを与えてしまいした。

2つ目の問題点は両CBの距離感。もちろん状況によってこれは変わりますが、この日は基本的に遠過ぎた。各々、1人ずつ持ち場を守っていた感じでした。連携もクソもない。これでは、ビジャレアルほど質の高い相手だと当然守れない。

アルバ、セルジ・ロベルとも含めて4人の距離感が悪く、ラインの設定もバラバラでした。

ピケを休ませるためにも、将来的なバルサのDFラインを考えた時にも、この2人のCBコンビはとても楽しみだったのですが、さすがに急造の左足コンビはキツかったか。ますますデ・リフトが欲しいと感じました。

・素晴らしかったビジャレアルの攻撃 抜群だったイボーラのポジショニング

もう一つ、次はビジャレアルを褒めます。

上の図2をもう一度見て下さい。バルサの守備の悪いところばかりを書きましたが、ビジャレアルの攻撃(ビルドアップ)も素晴らしかった。

私が特にいいな!と感じたのはイボーラのポジショニングです。スタートポジションはトップ下、左FWのトコ・エカンビに近い位置が多かったです。うまくブスケツの視野から外れ、カソルラやモルラネスにボールが入ると下がって受ける。単純ですが、うまく動いていました。

イボーラにはうまさに加え、高さ、強さもあります。いい選手です。カソルラ、モルラネスの2ボランチも技術が高い。2トップは言うまでもありませんね。なぜこのチームが降格争いをしているのでしょう。

・試合を壊したアルバロ・ゴンサレスの退場 ザルな守備

ビジャレアル目線でもう少しだけいきますね。

この日の前半(前線から・自陣)、後半の3つに分けてビジャレアルの守備を図にまとめています↓↓(図3,4,5)

図3
図4
図5

ざっくりとしか書きませんが、ビジャレアルは前後半で大きく守備を変えました。前半は前線ではほぼ同数の守備をして、自陣では5-3-2の守り。これは全く機能しませんでした。簡単に2失点。前半のうちにもう2,3点取られてもおかしくなかった。これはダメです。

後半はイボーラ、チェクエーゼを下げて5-4-1のコンパクトな2ラインを形成。メッシ投入後も、バルサにほとんど決定機を与えず見事な修正でした。

ホームで首位バルサ相手に勝利するチャンスがもう目の前まで見えていました。ぶち壊したのはアルバロ・ゴンサレス。全くいらない位置でスアレスに激しくアタックし、この日2枚目のイエローで退場。残り時間はわずか7分ほどでしたが、あまりにも不用意でした。この7分があれば、バルサは2点くらい取れてしまうんです。

良い選手がいるのに勝てないチーム。下位に沈むチームには、必ず何かしらの原因があります。この日はアルバロ・ゴンサレスでしたが、チーム全体の雰囲気、弱さが出た残り10分間だったのではないでしょうか。

毎年リーガを盛り上げるイエローサブマリン。ELではベスト8に進出していますが、リーガでは本気でヤバイ位置にいます。何とか残留してほしい。そう願う事しかできません。

すいません、長くなりました。

・イエロー7枚 最悪の内容だったバルサですが…

欠かせないピースになっているビダルはアトレティコとの大一番は出場停止。他にも6人がイエローカードをもらいました。それでも…。

ポジティブに考えましょう。こういう試合は年に数回あります。マドリー、リヴァプール、シティ、ユベントス。どのチームも絶対にシーズンのどこかで酷い試合をして負けています。

酷い試合がこの試合で、むしろよかったと考えるべきです。修正する時間はありますし、ピケ、ラキティッチ、メッシの出場時間はコントロールできました。さらに、バルサは負けませんでした。

マウコムは素晴らしいアピールを続けていますし、スアレスも復調。アルトゥール、ブスケツ、アルバらのコンディションは気になりますが、何とかしてくれるはずです。

確かに、期待していたウムティティ、ラングレのコンビは良くなかったです。それでもそんなに悲観的にならずに、私たちは次のアトレティコ戦に期待しましょう。

★最後に

中3日でアトレティコ戦です。この試合はホームで戦えます。心理的にもバルサが圧倒的優位。次は中3日でアウェーのユナイテッド戦ですが、この試合はフルメンバーで戦うでしょう。

勝てば優勝決定、引き分けでも十分、負けても内容が悪くなければ良い。私はそう考えています。

もちろん、しっかり勝って欲しいですけどね!

この試合のことは忘れて、期待してアトレティコ戦を待ちましょう!

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