【マッチレビュー】18〜19シーズン/リーガ第28節/ベティスVSバルセロナ/1–4

スタメン GKテア・シュテーゲン DFラインは右からセルジ・ロベルト、ピケ、ラングレ、ジョルディ・アルバ  中盤はピポーテにブスケツ、右インテリオールにラキティッチ、左にアルトゥール  3トップは右からメッシ、スアレス、アルトゥーロ・ビダル

両チームのスタメン

ベンチ シレッセン ウムティティ セメド アレニャー コウチーニョ マウコム ボアテング

★試合の流れ

バルサはアルトゥーロ・ビダルがスタメン。フォーメーション図で表すのは難しいのですが、私は基本的に4-3-3の左ウイングに入っていると捉えました。ただ、トップ下、4-4-2の左という表現もできます。右サイドバックはセルジ・ロベルトです。

ホームのベティスは予想通りのフォーメーション、メンバーで挑みます。

バルサは攻撃時、4-3-3もしくはビダルがトップ下の4-3-1-2のフォーメーション。守備時は前からプレッシャーをかけるときは4-3-3で同数の守り、引いて守るときは4-4-2のフォーメーションをとりました。

ベティスは攻撃時、3-5-2。守備時は5-3-2で前線からプレッシャーをかけて守ります。

両チームのフォーメーション、守り方は下のトピックスで詳しく取り上げます。

○前半

最初の決定機はスタジアムの後押しを受けるベティス。13分、右サイドのホアキンから逆サイドへ長いクロス。走り込んだグアルダードが折り返し、中央のヘセがシュートを放ちますがうまくフィットしません。

先制点はここまでシュート0だったバルサです。18分、アルトゥールが獲得したゴールまで20メートルのフリーキック。メッシが、壁とは逆の狭いエリアに低い弾道のシュートを蹴り込み、この試合最初のシュートで先制します。スペイン代表GKパウ・ロペスはノーチャンスでした。ゴラッソ。今季(リーガ)フリーキックからの直接ゴールはこれで4点目です。

その後はボールを保持しながらもうまく攻められないベティス、しっかりとした守備とハッキリとしたビルドアップで安定した戦いをするバルサ。という展開でゲームが進みます。ベティスは主に左サイドのテージョからチャンスを伺いますが、決定機は作れません。

40分、ベティスの前線からの守備。これに対し、テア・シュテーゲンから左のアルバにロングパスが通ります。このパスで完全に相手の包囲網を脱出したバルサ。アルバからビダル→メッシとボールがつながり、最後はゴール前でフリーになったスアレスが左足でシュートを打ちますが、これはパウ・ロペスにセーブされます。

このまま前半が終わると思われた47分、前半ラストプレーでバルサが追加点をとります。中央でボールを奪ったブスケツからアルバ、メッシ、スアレスとつなぎ、中央に運んだスアレスから空いたスペースに走り込んだメッシへの絶妙なヒールパス。メッシが左足ダイレクトでゴールに流し込み、簡単にこの日2点目をゲットします。

バルサにとっては最高の時間での追加点でした。2-0で前半を折り返します。

前半のポゼッションはベティス56%、バルサ44%。ただゲームを支配していたのはアウェーのバルサでした。

○後半

両チーム、ハーフタイムでの交代はありません。

後半もスタートからバルサペース。2分には左サイドの守備から、16分はバルトラのまずい守備から、どちらもスアレスが単独でゴール前まで運び、左足シュート。ただこれはどちらも枠外となり、バルサは決定的な3点目を奪えません。

ここまで前半も合わせて3度の決定機を外したスアレスですが、18分に素晴らしいゴールを決めます。

ウィリアム・カルバーリョのボールロストで、ハーフライン付近にいたスアレスにボールが渡ります。横にいたメッシは“どうぞ勝手に行って下さい”という感じで関わらず。パスコースが全く無い中、スアレスは単独でカナーレス、バルトラ、そして最後はマンディーと3人をかわしてシュート。GKとの1対1を落ち着いて制しました。約45メートルを1人で独走したスアレスのスーパーゴール。これで3-0となり、勝負は決まりました。

残りが20分をきると、ベティスの選手たちにも諦めモードが漂いプレスに行けず。バルサが自由にボールを回す時間が長くなりました。

37分、ベティスは途中出場のライネス→ロレンで1点を返しますが…。

結果的にこれはメッシのゴラッソを生み出すキッカケとなったに過ぎませんでした。

40分、バルサはコーナーキックの流れから、こぼれ球を拾ったビダル→メッシとボールがつながります。メッシは左にいたラキティッチに一度ボールを預けます。ラキティッチから“ここしかない”というタイミングと位置の優しいリターンを受け、メッシは左足ダイレクトで約15メートルのロングループシュート。ビューティフルゴールが決まってハットトリックを達成します。

これにはベティコからも大きな拍手とメッシコール。もうスタジアムもメッシを称えるしかありませんでした。ベティスの選手が頭を抱えるのは分かりますが、味方のラングレ、セルジ・ロベルトも頭を抱えていました。信じられないという様子で。それくらいすごいゴールでした。

最後にスアレスが自爆して負傷交代するといういらないオマケはありましたが、バルサは結果、内容が伴った完勝。リーガ前半戦で敗れたベティスにしっかりリベンジを果たし、良い形で代表ウィークのお休みに入ります。

★個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)

GKテア・シュテーゲン 7点

失点シーンはノーチャンス。この試合では無理にショートパスをつなぐのではなく、両サイド空いたスペースへの正確なロングパスで攻撃の起点になりました。ドイツ代表でも出番を得られるか。

CBピケ 7点

マッチアップしたヘセにほとんど仕事をさせませんでした。クロスボールの対処も問題なし。ここまでリーガ28試合フル出場です。代表引退してくれて本当に良かった。しっかり休んで下さい。

CBラングレ 7点

前半にもらったイエローカードもプロフェッショナルファール。ピケとともにサイドからの攻撃に落ち着いて対処しました。有難いことに、ラングレも代表ウィークはお休みできる(本人は悔しいでしょうが)。ゆっくり休んで下さい。

RSBセルジ・ロベルト 6.5点

前半は相手左ウイングバック、テージョのドリブルに苦しみましたが、後半は落ち着いて対応。攻撃での貢献、運動量も含めて及第点以上でしょう。セメド投入からは右インテリオールでプレーしました。

LSBジョルディ・アルバ 6.5点

ベティスのレジェンド、ホアキンに対して大きな仕事をさせず。この試合でもアシストは無かったですが、正確なパスと強度の高い守備でチームを引き締めました。

MFブスケツ 7点

前半戦(12節)の反省からか、中央で無理して貰ってボールロストする場面はほとんどありませんでした。それでも相手のプレスが弱まると、しっかりボールを受けて散らす。変則的な形の守備でも臨機応変に、落ち着いてプレーを見せました。

MFラキティッチ 6.5点(後半43分OUT)

いつもよりパスミス、ボールロストは多かったですが、守備では広いスペースのカバー、攻撃ではメッシのためのフリーランニングをいつも通りこなしました。

MFアルトゥール 6.5点(後半19分OUT)

相手の激しいプレスに苦しみました。その中でもボールをほとんど失わないのはさすが。ビダル先輩のプレーも素晴らしいのですが、この競争にしっかり勝ってほしい。

FWメッシ 9.5点 ★MOM

文字通り異次元でした。得点、攻撃面はもう何も言いません。守備でも走っていました。何より代表でケガをしないでほしい。

FW(MF)アルトゥーロ・ビダル 7.5点

メッシ以外でMOMを選ぶならこの人。左ウイングとも、トップ下とも、左サイドハーフとも言える微妙なポジションでしたが、うまくプレーしました。いつも通り守備は素晴らしかったのですが、この人、足元もうまい。メッセージを込めたパスを出せる高い技術を持っています。獲得は大正解でした。

FWスアレス 7点(後半45分OUT)

簡単に決められそうなチャンスを外し、訳の分からないゴールを決める。“スアレスらしい”試合でした。ケガについては下のトピックスで。

○交代出場

DFセメド 5.5点(後半19分IN)

シュミレーションでイエローをもらうなど、珍しく試合に入りきれなかった印象でした。

MFアレニャー 採点不可(後半43分IN)

もう少し長い時間プレーさせて欲しかった。

FWコウチーニョ 採点不可(後半45分IN)

短い時間ながらも、何度もボールに触り意欲を見せました。ただスタメンの地位は危うい。この日のフォーメーションはベティス対策の意味合いが大きかったですが、しっかり機能しました。現時点ではコウチーニョよりビダルの方が間違いなく良い。正念場です。

★トピックス

・機能した“ビダルシステム”

この試合、バルベルデの用意したベティス対策、“ビダルシステム”が機能しました。

ポゼッション率はベティス56.1%、バルサ43.9%(パス本数581:460)でしたが、試合後のメッシのコメントにもある通り、「ボールを持っていても持たなくても、ゲームを支配していた」のはバルサでした。

分かりやすくするため、図を作りました。

まずはバルサの守備。“高い位置からプレッシャーをかける守備(図2)”“4-4-2でリトリートして(引いて)守る守備(図3)”です。ご覧ください↓↓

図2
図3

前線で相手をハメられそうなときは図2の守り方、相手がファーストフィルターを突破して、しっかりボールをつないだら図3の守り方です。素晴らしかったのが、“図2→3の切り替えの速さ”です。

ビダルは前線から良い判断(臨機応変に)で強度の高い守備を見せ、リトリートする時の前後移動の素早さ、ポジショニングも的確でした。そして、ブスケツ、ラキティッチも攻守両面でこの変則的なフォーメーションにうまく適応しました。

頭の良さ、そしてそれを実行できる技術と走力。やはり素晴らしい選手たちです。アルトゥールも悪く無かった。

DF4人も基本的に同数の状況でうまく守っていました。

そして、この戦術をしっかり選手に落とし込み、結果を残すバルベルデ、すごいです。

続いて攻撃時(図4)↓↓

図4

ベティスもバルサ同様、守備では同数で前線からプレッシャーをかけてきました。

前半戦(12節)の対決ではこの状況で無理してつなぎ、奪われてショートカウンターという場面が多かった。この反省を踏まえてか、この日は“そこまで無理してビルドアップしなかった”バルサ。

その代わり、両サイド深くの広いスペースを有効に使いました。テア・シュテーゲンのパス精度も素晴らしかった。お世辞にも守備力が高いとは言えないベティスの両ウイングバック、ホアキンとテージョの裏をうまくつきました。

ただ、相手のプレスが少しでも緩むとブスケツ、アルトゥール中心にボールをつないでいました。悪い失い方は試合を通して0じゃないでしょうか。ほぼ完璧な戦いを見せたバルサ。ベティスは為す術ありませんでした。

・勝負を分けた個の力

この試合で私が最も感じたことは、“やっぱり個人の能力ってすごく大事なんだな”ということです。

バルサの選手は厳しいプレスを受けても、ほとんどボールを失いません。簡単なパスミスも少ない。ベティスも戦い方自体は面白く、能力のある選手も多いのですが、キケ・セティエンのサッカーをしっかり実行できる程の選手は少ないです。現在のベティスではカナーレス、ホアキン、パウ・ロペスくらいでしょうか。

それに対し、バルサの選手は全員が、特にアルバ、ブスケツ、ラキティッチ、メッシ、そしてビダルは飛び抜けて頭が良いです。ランニングの質、ポジショニング、プレスのスタート位置、監督の戦術を実行する力など、挙げればキリが無いですがボールを持っていない時のプレーが素晴らしいんです。

選手たちも、感覚的に動いているのがほとんどでしょう。言葉で説明するのが難しいのですが。また考察記事で取り上げたいと思います。

とにかく、この試合で個の力の重要性を再認識させられました。

・神様メッシ

個の力で言うなら、メッシです。もうレベルが違いすぎる。異次元です。ゴール以外のプレーも含めて。もう長々書きません。彼のプレーをリアルタイムで観られるのは本当に幸せです。私たちはただそれを噛みしめましょう。

・スアレス負傷

完全に自爆でしたね。ただ、自爆だったからこそそんなに大ケガにならなくて済みました。クラブの発表では10~15日の離脱とされています。丁度よく、代表ウィーク。ウルグアイ代表に帯同せず、中国に行く必要も無くなりました。これはある意味ラッキーです。ユナイテッド戦には間に合うでしょう。

4/6のリーガアトレティコ戦は無理する必要ありません。途中出場でフィーリングを確かめて、ユナイテッド戦でスタメン復帰する。そんなプランになるはず。焦らずしっかり治してもらいましょう。

・リーガ優勝へ前進

2位アトレティコとは10、3位マドリーとは12の勝ち点差をつけました。残りは10試合。優勝はほぼ間違いないと言って良いでしょう。

もうここからは、完全にCLを中心に考えてほしい。この日も交代が遅かったバルベルデ。頼みますよ。ベンチにも良い選手がいるんだから。

★最後に

この試合での最もポジティブな要素は、ビダルをウイング(トップ下)で起用する新フォーメーションが機能したことでしょう。守備はかなり安定し、攻撃面でも質が落ちないことが分かりました。

この日のスタメン11人+シレッセン、セメド、ウムティティ、アレニャー、デンベレ、コウチーニョの計17人は、ほぼ同じ質でプレーできます。フォーメーションも4-3-3,4-4-2,4-3-1-2の3種類はしっかり機能する。

昨シーズンには無かった選手層です。今季こそCL。ここ最近の戦いを見ていると、本当にいける気がする。

代表戦でケガ人が出ないことを祈りながら、次の試合まで2週間待ちましょう。

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