ラキティッチ(32)のセビージャ復帰が正式発表されました。
バルサの選手として6シーズンプレーし、310試合出場35ゴール42アシスト。
加入初年度の3冠や4度のリーガ制覇など、計13のトロフィーをもたらしてくれました。
本稿では、そんなラキティッチへの敬意を込めて!!
彼の功績を7つのキーワードとともに振り返っていきたいと思います。
★7つのキーワード
○シャビの後継者
○MSNを活かす名脇役
○CL制覇と先制ゴール
○メッシとの縦関係
○ピポーテとしての働き
○稼働率の高さ
○性格の良さ
○シャビの後継者
ラキティッチが加入した14-15年度。
シャビは34歳でシーズンを迎えます。勤続的な疲労、年齢による衰えなどは囁かれていましたが、依然としてバルサの中心選手。
何より“あのシャビ”の代わりを務められる選手なんて、カンテラからも外からも簡単に見つかるはずがない。そう思われていましたね。
そんな中、セビージャの主将としてELを制覇し、個人でも自身最高のパフォーマンスを残したラキティッチが加入します。(移籍金1,800+300万ユーロ)
持ち前のインテリジェンス、適応力の高さ、確かな技術、単純な身体能力。ルイス・エンリケが見出したMSNの縦に早いサッカーも追い風となり、シーズン中盤ごろからは完全に右インテリオールのレギュラーの座を掴みました。
結果的に、このシーズンを最後にシャビはバルサを退団。
ラキティッチは後継者として、“イニエスタの隣”のポジションを確立し、シャビとはまた違ったスタイルで押しも押されもしないバルサの中心選手となりました。
○MSNを活かす名脇役
MSN。メッシ、スアレス、ネイマール。
当時、年齢的にもピークを迎えていたメッシ、スアレスと、伸び盛りのネイマールを擁した超強力トリデンテは欧州を席巻しました。このMSNを活かす上で、彼らが活きる上で、重要な役割を担ったのがラキティッチでした。

上の画像にあるとおり、ラキティッチは「攻撃、攻撃→守備、守備」ほぼ全ての局面で素晴らしい働きをしました。
【攻撃】
相手陣地に侵入した時のメッシとの相性は抜群(この部分は後述します)。
それにラキティッチ自身の得点能力も高かったですね。ミドルシュート、抜け出してからの落ち着き、打点の高いヘディング。得点パターンも多い選手でした。
【ネガトラ(攻→守)時】
ブスケツとのコンビで相手を自陣に閉じ込める場面が多かった。
セカンドボールの予測とポジショニング、判断の良さと局面の強さ、本当にセンスの良い選手だったという印象です。
【守備】
お世辞にも守備力が高いと言えないメッシ、アウベスの右サイドのスペースを広く、深くカバーしました。
豊富な運動量と献身性は攻撃的な人選のチームを何度も助けました。
自陣深くでのビルドアップ、相手に囲まれた時の細かい技術等はシャビらに遠く及びませんが、その部分を差し引いても余りあるほどの貢献度でしたね。
MSNを支えた名脇役でした。
○CL制覇と先制ゴール
チームメートをリスペクトし、黒子役に徹していたラキティッチですが、加入初年度で勝ち進んだCL決勝の舞台で大仕事をやってのけます。
左サイド深くでボールを受けたアルバからネイマールへ。ネイマールが時間を作ったところに走り込んだイニエスタにボールが渡ると、さらに走り込んだラキティッチが左足ダイレクトでゴール。
名手ブッフォンが守るユベントスのゴールをこじ開け、貴重な先制点を記録しました。
懐かしいですね。もう5年以上も前ですか。自宅テレビの前で叫んだのを覚えています。皆さんもあの決勝戦にはいろいろな思い出があるでしょう。
あのシーズンから、バルサはCLでベスト8,8,8,4,8。ここ3年はショッキングな…
おっと、この記事ではやめておきましょう。
○メッシとの縦関係
その後ネイマールが去ってMSNは解体されますが、ラキティッチは重要な存在であり続けました。彼がそれだけ重宝された最も大きな要因はメッシとの好相性です。

ラキティッチはライン間の狭いスペースでのプレーが苦手な分、背後のスペースを使うのがとてもうまい選手でした。
メッシが右サイドで前を向いてボールを持つと、右のアウトサイドやハーフスペース、時にはCBの背後(中央のスペース)に走り込み、チャンスを演出します。
何がすごいって、使うスペースの選択やタイミングにミスが少ないんですよね。相手の守備陣形や時間帯、スコアや試合展開によってこのランニングを使い分け、攻撃に大きく貢献しました。
シャビにしかできないプレーを無理に頑張るのではなく、自分らしくバルサにマッチし、何よりメッシを活かす。これができる選手でした。
数年前、何かのインタビューでラキティッチは言いました。
「レオの分を走るのは当然さ。彼はそれだけの選手なんだから」。
上の図(画像2)では守備に関して触れていませんが、わざわざ書く必要もありませんね。
メッシがサボっても(攻撃のために力を溜めても)、チームがバランスを失わずに勝ち続けてこられたのは、ラキティッチの貢献があったからです。
○ピポーテとしての働き
メッシとの関係と同じくらい高く評価したいのが、ピポーテとしてのプレーぶりです。
ここ10年間くらいブスケツの定位置で、ローテーション時の代役すら見つからない期間も長かったポジションですが、ラキティッチの加入によってその状況は大きく改善されました。
下部組織出身でバルサのサッカーが体に染みついているはずの《セルジ・ロベルト、セルジ・サンペール、ジェラール・グンバウ》や、他の強豪チームで力を示して加入した《マスチェラーノ、アレクシス・ソング、アンドレ・ゴメス》ら、数多の選手がチャレンジし、力不足と判断されました。
ラキティッチはそのポジションをいとも簡単にこなしてしまいました。
GKを含めた自陣深くからのビルドアップ、相手陣地でのポジショニングと予測。これらは当然ブスケツには及ばないものの、ほぼ同水準のクオリティーを披露。運動量と単純な足の速さはブスケツよりも上なので、守備範囲に至ってはブスケツ以上だったとも言えると思います。
本当に素晴らしい働きでした。
○稼働率の高さ
そして、これまた高く評価されるべきなのが稼働率の高さです。
みなさん、ラキティッチがケガで離脱した記憶ってあります?
もちろん小さなケガで数試合欠場したことはあると思いますが(正直それもあまり記憶にありません)、バルサでの6シーズンはほぼフル稼働。
バーゼル、シャルケ、セビージャ時代にも長い離脱は無かったと思うので、かれこれ13,4年、デビューから途切れることなく試合に出続けていることになります。(しっかり調べていませんので、間違いがあれば申し訳ありません)
これって、すごいことですよね。
特に圧巻だったのが18-19シーズンでした。開幕直前までクロアチア代表としてロシアW杯を戦い、準優勝に貢献。そのままほぼ休みなくチームに合流すると、開幕からフル稼働してチームをリーグ優勝に導きました。
稼働率の高さはあまりクローズアップされませんが、この点はもう少し注目され、評価されるべきポイントだと思います。
ほんと、デンベ…
おっと、これも今回はやめておきましょう。笑
○性格の良さ
最後に書きたいのが、ラキティッチは本当にナイスガイだったということです。
復帰するセビージャとの関係性にも表されるように、チームや仲間へのリスペクト、家族愛やメディア対応、どれも素晴らしかったと思います。
今でもTwitterでよく見る、リヴァプール戦のあのミス。彼を責めたくなる気持ちも分かりますよ。今季途中には起用法などを巡ってマイナスの発言もありました。分かりますよ。
それでもラキティッチがバルサを愛し、全力でプレーしてくれた事実に変わりはありません。彼に何度助けられたことか。どれだけ走ってくれたことか。試合に出場するだけで、カンプ・ノウから大喝采を受けるような男だったんです。
だからこそ、こんなチーム状況でも彼が裏口から追いやられるようなことがあってはならないと思っていました。マスチェラーノのような完璧な別れとは言えなかったですが、しっかりとセレモニーと会見が開かれたことにはホッとしました。本当に良かった。
★最後に
メッシの件が未だに決着つかず宙ぶらりんの状況。筆者自身もなんだかモヤモヤする時間を過ごしていますが、ラキティッチの記事をしっかり書ききることができて良かったです。
彼は立派なレジェンドの1人だと思いますよ。それだけの貢献をしてくれました。
同じリーガのセビージャ復帰ということで、まだまだ彼のプレーを見ることができるのが楽しみです。
アディオス、ラキティッチ!! グラシアス、ラキティッチ!!