【マッチレビュー】18〜19シーズン/国王杯準々決勝2ndレグ/バルセロナVSセビージャ/6−1

スタメン GKシレッセン DFラインは右からセルジ・ロベルト、ピケ、ラングレ、ジョルディ・アルバ 中盤はピポーテにブスケツ、右インテリオールにラキティッチ、左にアルトゥール 3トップは右からメッシ、スアレス、コウチーニョ

ベンチ テア・シュテーゲン ベルマーレン セメド アルトゥーロ・ビダル アレニャー ボアテング マウコム

試合の流れ・・・3点差以上の勝利が求められた試合。ホームで戦う大一番に、バルベルデはベストメンバーを投入。唯一2つの選択肢があった右サイドバックには、セルジ・ロベルトを起用した。

5連覇を目指して序盤からエンジン全開のバルサ。対してセビージャ守備時のフォーメーションは5−3−1−1。後方からのビルドアップに対して、ピケ・ラングレの両CBにアンドレ・シウバがコースを切りながら対応し、サラビアがブスケツを自由にさせないポジションを取った。

セビージャ指揮官のパブロ・マチンは「前線からむやみにプレッシャーをかけ続けるのではなく、パスの供給源であるブスケツを自由にさせない」という戦いを選択。攻撃も、速攻ばかりに頼るのではなく、しっかりとボールをつなぎ両サイドからチャンスを作る形でアウェーゴールを狙う。

カンプ・ノウの後押しを受けるバルサは、まず前半12分。メッシからボールを受けたコウチーニョがペナルティーエリア内に侵入。走り込んだメッシに足の裏で優しくボールを戻すと、プロメスとの接触でPKをゲットした。メッシの自滅にも見えたが判定は変わらず。

キッカーはなんとコウチーニョ。自身から見て左下にしっかり蹴り込み、早い時間で先制点を記録する。(ゴールは前半13分)

良い形で試合に入れたバルサ。まだ有利な状況ながらも苦しくなったセビージャ。

そして前半24〜27分の4分間、シレッセン劇場が繰り広げられる。

まずは前半24分、セビージャ右サイドの攻撃だ。プロメスがアルバをぶっちぎりグラウンダーのクロスを上げると、中央で待ち構えていたアンドレ・シウバが右足ヒールシュート。完全にゴールかと思われたが、シレッセンの右手がボールに届きシュートはポスト直撃。まずは一本スーパーセーブを見せた。

セビージャの攻撃は続く。スローインの流れから裏に抜け出したロケ・メサをピケが後ろから倒しPK。リプレイで見ると、ロケ・メサのポジションがオフサイドに見えたが、先ほどのメッシの件があるだけに大きな声で文句は言えない。絶体絶命。決められると、バルサは更に3点が必要になる。

キッカーはバネガ。スタジアムからは大ブーイング。バネガが右足で丁寧に蹴ったシュートを、シレッセンが完全にコースを読んでセーブ!

シレッセンのPKストップ

完全に“いける雰囲気”になったバルサ。前半31分、センターサークル付近でボールを受けたアルトゥールのスルーパスにラキティッチが飛び出す。出てきたキーパーの前でコースを変えたシュートはゆっくりとゴールに吸い込まれ、2点目をゲット。2戦合計スコアでも同点に追いついた。古巣へのリスペクトで喜ばないラキティッチ。かっこよすぎませんか?

その後も相手を押し込み貪欲にゴールを狙うバルサ。セビージャは完全に自陣に引いて守るしかなくなり、アンドレ・シウバとサラビアがアルトゥールとブスケツのマークをする形になった。これではボールを奪っても攻撃につなげられない。追加点こそ奪えなかったが、完全にバルサの形で前半を終えた。

後半、バルサは同じ布陣でスタート。セビージャも交代はなかったが、明らかに攻撃に人数をかけてきた。アウェーゴールの関係で、セビージャが1点取ればバルサは2点が必要になる。

しかし、そんなセビージャの狙いはバルサの連続得点で脆く崩れ落ちる。

まずは後半8分、右サイドに流れたスアレスがボールを受けると、中央に低めのクロス。左サイドから走り込んだコウチーニョがドンピシャのダイビングヘッドで合わせて3点目

続けて後半9分。セルジ・ロベルトが右に開いたメッシに浮き玉パス。メッシがドリブルで3人を引きつけると、走り込んだセルジ・ロベルトにスルーパス。右足のシュートが突き刺さり、4点目を奪った。カンプ・ノウの雰囲気は最高潮に。

カンプ・ノウの奇跡での決勝ゴール(上)
この日の試合でのゴール(下)

勝負は決まったかに見えた。しかしバルサはここから、勝ち抜けのために2点が必要になったセビージャの攻撃に苦しめられる。この状況で諦めずに戦ったセビージャにも拍手を送りたい。

完全に開き直り、後ろを同数にして攻め込むセビージャに対し、バルサは受けに回ってしまった。開始からエンジン全開で戦った疲れが出たのか、急にパス回しがチグハグになり、簡単なボールロストが増える。

そして後半22分、シレッセンのまさかのキックミスから、最後は走り込んだアラナに豪快に決められ1点を返される。

状況は一変。セビージャはあと1点取ればで勝ち抜け。メッシやセルジ・ロベルトが決定機を外し、クレもドキドキしたことだろう。それでも集中を切らさなかったバルサ。

ラキティッチ→ビダル、コウチーニョ→セメドの交代も的確だった。(セメドの投入で、セルジ・ロベルトが左ワイドに入る変則的なフォーメーションになった)

そして…早起きして試合を見ていた日本のファンは、ラスト5分で最高の“ご褒美”を得る。

後半44分、相手左サイドからのコーナキック。スアレスがニアでクリアすると、それを拾ったアルバから右サイドにいたメッシへ。セビージャの17歳、ブライアン・ヒルとの競争に勝ったメッシが逆サイドに走り込んだビダルへボールを送ると、更にオーバーラップしていきたアルバ→スアレスとつながり見事なゴール。お手本のようなカウンターを成立させ、マニータを達成した。

まだ終わらない。後半47分。相手のフリーキックの流れから、またカウンターを仕掛ける。クリアしたのは自陣ペナルティーエリア内で競り合ったビダル。そのボールにセルジ・ロベルトが反応し、アレニャーへ。アレニャーはドリブルで前進しながら、メッシを探す。ボールを受けたメッシが逆サイドのビダルへ。ビダル→スアレス→ピケ→スアレス→アルバ→メッシとダイレクトが5本つながり、最後はメッシが余裕を持ってゴール

最高の形で試合を締めくくり、バルサが準決勝へ駒を進めた。

個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)

GKシレッセン ⒏5点 ★MOM

頭が上がらない。PKストップとその直前のスーパーセーブ。キックミスから失点を招いたが、文句なしのMOM。前半で1−1になっていたら、勝ち抜けは相当難しくなっていただろう。いなくなって欲しくないが、年間を通して活躍する姿も見たい。とにかく、国王杯はシレッセンのために絶対優勝したい。そう思わせてくれる活躍だった。

CBピケ ⒍5点

このマニータ男は5点では足りず、6点目のシーンで攻め上がりFWばりのダイレクトタッチで得点に絡んだ。PKを与えたが、それ以外は合格点。攻め込まれた時間帯も落ち着いて対応した。

CBラングレ 7点

DFラインの安定をもたらしている。強力な相手の2トップをほとんど自由にさせず、前への強さを見せた。ビルドアップでもミスがなかった。

RSBセルジ・ロベルト ⒎5点

この大事な一戦にスタメン起用された意味をしっかり分かっていた。ボールキープやポジショニングにミスはあったが、メッシとのコンビで4点目をゲット。今シーズン初ゴールだった。セメドとのポジション争いは続くが、途中から左ワイドにポジションを移したように、このポリバレント性はチームにとって本当に貴重。このまま調子を上げていってほしい。

LSBジョルディ・アルバ 7点

2アシストを記録した。前半はプロメスの突破に苦しめられたが、後半は守備も改善した。特にスアレスへのアシストは、ここしかないという位置にクロスを上げた。次のリーグ戦は右セメド、左セルジ・ロベルトで、休ませてもいいのではないか。

MFブスケツ ⒍5点

とても良くはなかったが、それは我々の要求が高すぎるからだ。ミスはあったが、ポゼッション時、ちょうど相手が嫌なところに立って両CBとアルトゥールに自由を与えている。ラキティッチも高いレベルでピポーテを務められるが、この人はやはり特別。週末のバレンシア戦は累積で出場停止。

MFラキティッチ ⒎5点(後半31分OUT)

メッシが引いたスペースに走り込み、アルトゥールからのパスでチーム2点目を決めた。交代で退くまで前後の動きを続け、攻撃には深みを、守備には安定をもたらしている。

MFアルトゥール 8点(後半45分OUT)

試合に出るたびに成長を続けている。特にラキティッチへのスルーパスは、シャビやイニエスタを思い出させた。後半、時間が経つにつれて少し存在感は薄れたが、チームがポゼッションに苦しむと低い位置でボールを受けてファールをもらい落ち着かせた。もはや、カンテラ出身かどうかは関係ない。この人がシャビの後継者だ。

FWメッシ ⒏5点

試合開始からエンジン全開でバルサを引っ張った。中央でボールを持つとアマドゥに厳しいマークを受けたが、しっかりと攻撃を循環させた。コウチーニョにPKを譲って自信を与えると、最後にはこの日唯一欠けていたゴールを決めてドラマを完結させた。4−1の状況では自陣右サイド深くまで守備に戻り、この試合への気持ちを感じさせた。偉大なカピタン。

FWコウチーニョ 8点(後半36分OUT)

おかえり!コウチーニョ! チームが欲しかった1、3点目を記録。大きな動きで攻撃に深みを作り、メッシやスアレスにスペースを与えた。ミスもあったが自信を取り戻したプレーを見せてくれた。

FWスアレス 7

得点シーンは簡単に見えるが、うまくバウンドに合わせて当たり前のように決めるところがさすがだった。ケアーもいいCBだが、スアレスの方が試合を通して一枚上手だった。ロケ・メサとの言い合いでイエローカードをもらったが、闘う気持ちをチームに見せつけた。

交代出場

MFアルトゥーロ・ビダル ⒍5点(後半31分IN)

15分間でしっかり仕事をこなした。守備ではその強さで安定を与え、攻撃では長い距離を走って5、6点目の起点になった。この人がベンチにいるありがたみを感じた。

DFセメド 採点不可(後半36分IN)

先週のジローナ戦ではMVP級の活躍を見せたが、この日はベンチスタート。文句の一つでも言いたくなるだろう。この先も継続的に出場機会を与えられるはずなので、セルジ・ロベルトを他のポジションに追いやるくらいのプレーを続けてほしい。

MFアレニャー 採点不可(後半45分)

6点目の起点になった。短い出番だったが、こういった大事な試合で少しでも出場することが今後につながっていくはず。セルジ・ロベルト先輩のように結果を残していってほしい。

トピックス

コウチーニョ

もう一度言いたい。おかえりコウチーニョ。相手DFラインの裏、DFラインと中盤のスペースに上下動を繰り返してボールを引き出し、メッシやスアレス、アルバにスペースを作った。プレッシャーのかかるPKをしっかり決め、欲しかった3点目も後半の序盤で決めた。

簡単なミスも確かにあった。まだ完全復活と言えるかどうかは分からない。それでもこの試合は、私たちが待ち望んだ本来のコウチーニョを見せてくれた。デンベレ復帰まであと数試合。どれだけ自分の価値を示せるか。週末の相手バレンシアも難敵。継続してパフォーマンスを見せてほしい。

雄叫びをあげるコウチーニョ

我らのキャプテン、メッシ

コウチーニョの不調が精神的な問題だったのかは分からないが、そのブラジル人にPKを譲り自信を与えた。プレーだけではなく、人間性も神様なのか。

この日は守備にも奔走し、国王杯は捨てる大会ではないと再確認させてくれた。悲願のCL制覇、そして3冠を目指す上で、ターニングポイントになる試合だったかもしれない。しっかりと休養を受け入れて、調子を保ったままシーズン終盤までいってほしい。

中盤3枚の形

この試合では、ポゼッション時にこれまでと少し違う位置どりをしていた。アルトゥールがブスケツのほぼ左真横に。その分ラキティッチが高い位置を取った。

様々な要因が考えられるが、第一はブスケツの負担を減らすことだろう。相手FWのプレッシャーのかけ方によってこの3枚が臨機応変に立ち位置を変えることできれば、ビルドアップもスムーズに進む。

反対に、後半セビージャの攻撃を受けた時間帯。前半との大きな違いは、アルトゥールの存在感が薄れたことだった(運動量の低下)。要するに、ビルドアップや攻撃の組み立ての部分ではもはやアルトゥールが最も大きな役割を担っている。恐るべきアルトゥール

シレッセンのために

こんな活躍を見せられては、「国王杯は最悪捨ててもいい」など言えない。去就に関しては本人の納得する結果になってほしい。とにかく、今のバルサは世界で一番優秀な第2GKがいることに感謝しないといけない。

最後に

セビージャ相手に0−2から勝ち抜けという難しいミッションを見事に達成した。今シーズンはスタメン争いをできるメンバーが増え、チームに厚みができた。

とはいえ、大幅なターンオーバーを組んだ試合はそこまで上手くいっていない。国王杯で勝ち上がり、2月からはCL決勝トーナメントも始まる。この日のコウチーニョ、セルジ・ロベルトのような働きを、あともう2人(アレニャー、ベルマーレン、ボアテングあたり)できるようになれば、リーガと並行してしっかり戦っていけそう。

そして、ビッグイヤー獲得にはカンプ・ノウからの後押しも不可欠だ。この日の観客は58,050人ながら、審判へのプレッシャーも含めてかなり良い雰囲気を作っていた。

とりあえず、週末の難敵バレンシア戦。ブスケツ不在をどの程度カバーできるか。他のローテーションメンバーがどれだけ仕事をできるか。期待しましょう。

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