【日本代表マッチレビュー】2019コパ・アメリカ/GS第2節/ウルグアイVS日本/2−2

★スタメン GK大迫敬介  DFは右から岩田智輝、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉 ダブルボランチは柴崎岳、板倉滉 右に三好康児、左に中島翔哉、トップ下は安部裕葵 1トップに岡崎慎司

両チームのスタメン

○ベンチ GK 小島,大迫 DF 原,菅,立田, MF 中山,渡辺,伊藤,松本,久保 FW 前田,上田

★試合の流れ

初戦のから大幅(6人)にメンバーを入れ替えてきた森保ジャパン。GK川島、FW岡崎のベテラン組が先発です。右サイドバックにはA代表デビュー戦となる大分の岩田が入り、柴崎の相方は板倉。2列目は右から三好、安部、中島です。

チリ戦と同じ4-2-3-1のフォーメーションで挑みます。

FIFAランク8位のウルグアイは盤石のメンバー。ゴディン、ヒメネスの(元)アトレティコCBコンビに、スアレスとカバーニの強力すぎる2トップ。リーガファンならお馴染みのストゥアーニ(ジローナ)、マキシ・ゴメス(セルタ)はベンチスタート。改めてFW陣、贅沢すぎですね。

ウルグアイはオーソドックスな4-4-2で戦います。率いるのは72歳の老将オスカル・タバレス。

○前半

まず最初のシュートはウルグアイ。開始55秒ほどでした。

センターサークル付近で柴崎からパスを受けた板倉。ですが、これをトラップミスしてしまいます。プレッシングを掛けていたスアレスが、少し浮いたボールをダイレクトでシュート。約50mのロングシュートになりますが、バーのわずかに上。日本としてはいきなりヒヤッとするシーンを作られます。さすがスアレス。抜け目ない。

次のチャンスは日本でした。3分。

中島が低い位置でボールをキープして、右サイドに展開。深い位置の三好までボールがつながると、三好はドリブルで縦に仕掛けます。ディフェンスのタイミングを外した右足クロスに合わせたのは岡崎。ダイレクトで合わせますが、このシュートはゴール右に外れます。

中島、三好、岡崎の良さが出た良い形の攻撃でした。

チリ戦とは違い、まずは2トップからブロックを作ってしっかり守備から入った日本代表。ウルグアイのスイッチがまだ入っていないこともあって、カウンターからチャンスを作ります。

13分には反対にカウンターからウルグアイに大チャンスを作られますが、スアレスのヘディングシュートはキーパー正面で難を逃れます。

そして25分、日本にとって待望の先制点が生まれます。

左サイド自陣深い位置でスローインを受けた柴崎から攻撃がスタート。柴崎はスロワー(スローインを投げる人)の杉岡とのパス交換で相手のプレスをうまく回避し、逆サイドでフリーの三好に素晴らしいロングパスを通します。

前を向いて良い形でボールを持った三好。トラップから合わせて5タッチで縦に仕掛け、6タッチ目で放った右足シュートがゴールに突き刺さります。対応した相手左SBのラクサールは直前のプレーで足を痛めていましたが、それにしてもいい突破からのシュートでした。

中の岡崎、安部の動きも素晴らしかったですね。この得点シーンは下のトピックスで詳しく振り返ります。(このプレーの直後、ラクサールは交代でベンチに下がりました)

さぁ、今大会初得点+貴重な先制点を挙げた日本代表。ただ、もったいないプレーですぐ追いつかれてしまいます。

29分です。ウルグアイ自陣深く、何気ない一本のロングパス(フリーキック)がキッカケでした。

マッチアップは冨安VSスアレス、植田VSカバーニ。まず冨安がスアレスに身体をぶつけられ、ロングボールをかぶってしまいます。ボールはワンバウンドしてペナルティーエリア内に。走り込んでシュートモーションに入ったカバーニの右足に、植田のブロックの足が当たります。大袈裟に痛がるカバーニ。ノーファウルを主張する植田。

最初はノーファウルの判定でしたが、VARが介入。主審は自らモニターを確認しに行き、PKの判定が下されます。

微妙なプレーでしたが、植田が足の裏を見せてブロックに入り、その足がカバーニの右足に当たったのも事実。まぁ、妥当と言える判定かな、と思います。

カバーニが植田にアドバイスしていましたが、あれは冷静に左足でブロックに入る方が良かった場面です。軽率なプレーでした。

このPKをスアレスが難なく決めて同点。試合は振り出しに戻ります。(得点は32分)

36分には中央フリーになったカバーニに豪快な左足ロングシュートを放たれますが、これはクロスバーに当たってなんとか失点は回避します。

チリ戦に比べると格段に良い戦いをしていた日本。もったいない失点はあったものの、1-1で前半を折り返します。

○後半

両チーム、ハーフタイムでの交代はありません。

後半開始と同時にスイッチを入れ、圧力をかけてきたウルグアイ。日本は押し込まれる時間帯が長くなります。

10分にはカウンターから大ピンチを迎えます。日本は高い位置からのプレスでボールを奪ってチャンスを作りますが、最後は三好のシュートがブロックされ、ウルグアイのカウンターが発動。

植田を背負って縦パスを受けたスアレス。うまく身体を入れながら反転して、冨安(左CB)、杉岡(左SB)の間に走り込んだカバーニに絶妙なラストパスを送ります。完全に抜け出したカバーニでしたが、川島が良いタイミングで飛び出してシュートをセーブ。川島ナイスでした。

ピンチの後にはチャンスあり。14分に日本が勝ち越しゴールをゲットします。

相手の波状攻撃に耐えてカウンター。自陣ペナルティーエリア内でボールを奪った三好からのスタートです。中央付近まで運び、3人にプレスを掛けられながらも奪われず、ボールを安部につなぎます。ボールは安部から杉岡につながり、さらに中島→杉岡で左サイド深くまで侵入。

杉岡のクロス、ニアで飛び込んだのは岡崎。これはわずかに合いませんが、相手GKが弾いたところに詰めていたのは三好でした。自陣から約95m走ってきましたが、左足で落ち着いてゴールに流し込みました。

ボールに関わった全員が素晴らしい働きをして掴んだ得点でしたね。これで2-1。ウルグアイは攻めるしかなくなります。

さぁ、本当の意味で本気になったウルグアイ。時間はまだ30分以上残っていましたが、日本は守りに入ってしまいました。バタバタしてしまい、さらに押し込まれるようになりました。

21分、ロデイロの左コーナーにドンピシャで合わせたのはヒメネス(185cm)。すぐに同点に追いつかれてしまいます。競り負けたのは冨安(188cm)。身長は冨安の方が高いんですが、完全に前に入られてしまいましたね。さすがヒメネス。

さぁ、これでもまだ残り時間はアディショナルタイムを含めると30分ほどあります。

ここから更に盛り返す日本代表を見たかったんですが…。このメンバーにそこまでの力はありませんでした。交代で入った上田、久保も流れを変えられず。3点目を目指して攻め込んでくるウルグアイ相手に、全員で守って跳ね返すのが精一杯でした。

終盤(42分)には岩田→立田の交代で完全に守備固めに入った森保監督。同点での逃げ切りには成功し、勝ち点1をゲット。

収穫と課題が見えた90分間でした。何より、GS突破の可能性を残して第3戦を戦えるのは評価できる点です。

★個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)

GK川島永嗣  7点

さすがベテラン。落ち着いたプレーでチームに安定感をもたらしました。2失点はともにノーチャンス。後半は抜け出したカバーニとの1対1をストップするビッグセーブもありました。

まだまだやれるというところを見せてくれましたね。

CB植田直通 5点

不用意なアタックでPKを献上。色々議論されていますが、あれはPKを取られても仕方ないプレーだったと思います。カバーニとのマッチアップに苦労しましたが、本当に頑張ってギリギリで戦えていた印象です。

さらなる進化が必要です。ただ、ファイトできるタイプのサイズがあるCB、楽しみな存在です。

CB冨安健洋  5点

簡単に身体を入れ替えられてしまうシーンもありました。冨安もマッチアップしたスアレス相手に苦しみましたね。成長著しいですが、まだまだです。スアレスクラスに圧倒できてこそ、本当の意味で世界トップレベルのCB。

伸び代を期待しての低評価です。もっともっと頼もしい「壁」になってほしい。

RSB岩田智輝 5点(後半42分OUT)

ボールを持った時の落ち着き、運びのうまさ、頭の良さは披露してくれました。ただ、守備で苦労しました。ボール保持者に対する“距離”が遠いんですよね。かわされなくても、簡単にクロスを上げられるシーンも多かった。寄せる守備ではなく、奪いに行く守備。そういう部分での成長を、この大会で見せてほしいです。

LSB杉岡大暉 5.5点

2点目の起点になった攻撃参加は見事でした。チリ戦よりも中島が頑張ってくれたこともあり、守備も何とかできていましたね。

MF柴崎岳 7点

先制点のキッカケになったロングパス、守備の危機管理能力など、攻守で存在感を示しました。やはり、このメンバーだと技術の高さや落ち着きが圧倒的ですね。

来季の所属チームを探すという意味でも良いアピールになったと思います。

MF板倉滉 4.5点

最後までフワフワしていましたね。ファーストプレーでミスをしてから、とにかく落ち着きが無かった。守備面の高さという意味では力になっていましたが、ボランチとしては完全に落第です。

ボールの持ち方が、ボランチの選手のソレじゃないんですよね。このレベルでやるのは厳しいと思います。

MF三好康児 7.5点 (後半38分OUT) ★MOM

2ゴールをゲット。文句なしのチームMOMです。

開始直後から良いポジショニングでボールを受け、チャンスを作りました。ボールタッチのフィーリングも良かったですね。

圧巻は2点目。自陣ペナルティーエリア内からボールを運び、相手を引きつけて左サイドに展開。そのままゴール前に走り込み、相手GKが弾いたボールを落ち着いて流し込みました。ランニングの距離は約95m。このシーン以外でもしっかり走り、ウルグアイの屈強な選手相手にも臆さず、自信を持って戦いました。

現時点では久保、堂安よりもワクワクさせてくれる存在です。

MF中島翔哉 7点

良かったですね。チリ戦のマッチレビューではボロクソ書きましたが、この試合は贔屓目なしで良かった。ボールロストも少なく、賢いプレーでしっかり時間を作るシーンもありました。

守備も頑張りました。ウルグアイが、チリよりも守りやすい攻め方をしてくれたので何とも言えませんが、少なくとも走行量、前後のスプリント回数は増えているハズです。

あの守備は最低限ベースとして、ボールを持った時にどれだけの働きができるか。エクアドル戦も楽しみです。

MF安部裕葵 6.5点(後半22分OUT)

ゴール、アシストはありませんでしたが、良い働きでした。ギャップで受けて散らす、しっかりと味方に間違いなくボールをつなぐ、トップ下として及第点でしょう。

守備時は岡崎と2トップの形になって、しっかりと守りました。2列目は東京五輪に向けて最も競争率の高いポジションですが、しっかりとアピールに成功しました。

FW岡崎慎司 6点

さすがというプレーが多かったですね。攻撃では泥臭く戦いマイボールにする、鋭いターンからのシュート、味方のスペースを作るランニング。守備でも単独のプレッシングやプレスバックで相手にとって嫌な仕事を最後まで続けました。

ゴール、アシストは生まれませんでしたが、2得点のシーンどちらともペナルティエリア内で相手を引きつけ、三好のゴールをサポートしました。

就活成功すると良いんですが。

○交代出場

FW上田綺世 4.5点 (後半22分IN)

ダメでしたねぇ。ゴディン、ヒメネスといった世界最高レベルのCB相手に何もさせてもらえませんでした。もう少しスピードに乗った積極的な仕掛けが見られると良かったんですが。

MF久保建英 採点不可 (後半38分IN)

約15分間のプレータイムがありましたが、何もできませんでした。

DF立田悠悟 採点不可 (後半42分IN)

守備固め、相手のクロスボール対策で出場。A代表デビューでした。

★トピックス

・【日本】“個と連携”で生まれた得点シーン

日本の得点シーンはどちらも、“個の能力とチームとしての連携”から生み出されたものでした。

図2

上の図2は先制点のシーンです。柴崎のロングパスで相手を完全に裏返し、ほぼ数的同数の状況を作りました。まず、この局面を作り出したのは“柴崎の個”です。

そして、図のようにほぼフリーでボールを持った三好。中に走り込んだ安部、遅れてマイナス気味に走り込んだ岡崎が相手DFの目線を引きつけてくれました。三好には、パスコースが2つ、そして自分で仕掛けるという計3つの選択肢がありました。この状況を作り出したのは“チームとしての連携”です。

選択は“自分”でした。対応したラクサールは、三好が左利きということもあり、縦は全く警戒していませんでした。

GKもニアは警戒していませんでしたね。三好は見事に右足でシュートを突き刺しました。

・【日本】改善された前線の守備

チリ戦では良くなかった前線からの守備。これもかなり改善されましたね。ウルグアイがオーソドックスな4-4-2で戦ってきたこともあり、“ハメやすい形”でした。

図3
図4

上の図3はチリ戦の守備、下の図4はウルグアイ戦の守備です。相手フォーメーションの違いはありますが、日本の守備は意識的にかなり変化が感じられました。

岡崎、安部はある程度の位置まで下がって守備をスタート。
・CBにプレスをかけつつ、自分の後ろにいるボランチのパスコースを切る
・もしボールを通されたとしても、しっかりとプレスバックして守備を助ける

この2つを徹底していました。特に岡崎はさすがでしたね。

上田、久保も合わせた前線のユニットで、当たり前のようにこの形の守備ができるようにしないといけません。

・【ウルグアイ(バルサ)】スアレスはボチボチ

バルサ所属のスアレスについても少しだけ。右膝半月板の手術でシーズンを少し早めに終えました。ケガ明けですが、コンディションは悪くなさそうでしたね。一部報道では3kgほど痩せたなんていう情報もありますが、そこまで見た目は変わっていませんでした。

この試合、シュートはチーム最多11本(うち枠内3)。ただ得点はPKによる1点のみ。バーに阻まれたシーンもあれば、ドフリーの場面でGK正面のシーンもありました。

クレとしては、ここ(コパアメリカ)ではなく新シーズンにコンディションを合わせて欲しいところですが…笑。まぁ、手術の影響はそこまで無さそうだったのでひとまず安心しました。ケガしないでね。という感じです。

★最後に

グループA3位のペルーが大敗してくれたおかげで、日本のGS突破の可能性もかなり大きく残りました。とはいえ、まずしっかりエクアドルに勝つしかない。

エクアドルのFIFAランクは60位。格下です。このメンバーでも勝たないといけません。

この大会で決勝トーナメントに残れるか、GSの3試合で帰るか。大きく違います。期待します。

応援しましょう。頑張れニッポン!!

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