欧州シーズンオフなので、コパ・アメリカの日本代表戦はマッチレビュー書きます!
★スタメン GK大迫敬介 DFは右から原輝綺、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉 ダブルボランチは中山雄太、柴崎岳 右に前田大然、左に中島翔哉、トップ下は久保建英 1トップに上田綺世

○ベンチ GK 川島,小島 DF 板倉,菅,岩田,立田 MF 渡辺,伊藤,三好,松本,安部 FW 岡崎
代表の試合をまともに見るのはアジアカップ以来。親善試合やトゥーロンは見たり見なかったりでした。
Jリーグの試合もあまり追えていないので、この試合がフル代表初出場となった大迫、原、杉岡、中山、前田、上田あたりは特徴を知ってるくらいでほぼ初見です。ご容赦ください。
★試合の流れ
スタメン11人のうち植田、柴崎、中島以外の8人が東京五輪世代。フォーメーションは予想された3-6-1(5-4-1)ではなく4-5-1(4-2-3-1)。フル代表と同じシステムです。
対するチリはこの大会2連覇中の王者。スタメンは、ルエダ監督が事前に公表した11人そのままでした。
世界的に有名な選手はA・ビダル(バルセロナ)、A・サンチェス(マンU)くらいですが、各ポジションに好選手が揃っています。スタメン11人中8人は優勝した前回大会(2016年)と同じメンバーという事で、連携的にもバッチリです。
○前半
キックオフ直後からお互いハイプレスを仕掛ける激しい展開。若き日本代表も積極的な姿勢で試合に入りました。
ファーストシュートは日本。前半7分、右サイド角度のない位置からのフリーキックを久保が左足で直接狙いますが、枠を捉えられません。
12分には、また久保がチャンスを作ります。左サイドに開いてボールを受けると、また抜きで1人をかわして上田にスルーパス。相手DFにギリギリで防がれますが、惜しい場面を作ります。
このプレーで得た左コーナーキック。中島のボールに植田がドンピシャヘッドで合わせますが、キーパー正面でした。
チリ代表のファーストシュートは14分です。右サイドからクロスがファーサイドに流れたところにビダル。右足ボレーで合わせますがこのシュートはバーの上に外れます。
15分くらいから、両チームプレッシングを緩め、試合が落ち着きます。ここまで試合は日本のペースでしたが、15分以降はチリが徐々に質の違いを見せ、押し込んできます。
主な原因は日本代表の両サイド(中島,前田)の守備。特に左の中島です。詳しくは下のトピックスで解説しますが、サボりすぎでした。相手右サイドを自由にさせてしまった事で、何度もチャンスを作られてしまいました。
あとは、前線からのプレスもチグハグで中途半端。失点する前からこれでは無理だと思いました。
この部分は後で詳しく解説しますね。試合の流れに戻りましょう。
15~40分の間はチリペースなものの、柴崎の危機管理能力、植田,冨安の高さと落ち着きでなんとか守れていた日本。このまま前半を終えたかったんですが…。41分にセットプレーから先制点を与えてしまいます。
アランギスの右コーナーキックから、プルガルのヘッド。マッチアップした中山は完全に頭一個上から叩かれてしまいました。
ただ、このコーナーを与えたキッカケも日本左サイドの守備なんです。恐れていた形で、嫌な時間帯にゴールを奪われてしまいました。
44分、日本の反撃。高い位置からのプレッシングがハマりました。相手陣地でボールを奪った柴崎から上田へのスルーパス。上田はいい形で抜け出してキーパーをかわしますが、体が流れてしまいシュートは枠内に飛びませんでした。
チリGKアリアスの対応、DFの戻りも早かったです。
結果的には、日本にとって前半最大のチャンスを生かせずファーストハーフ終了。0-1で折り返します。
○後半
両チーム、ハーフタイムでの交代はありません。フォーメーションもそのままで挑みます。
後半も開始から圧力をかけるのはチリ代表。日本はチャンスを作るどころか、自陣からの脱出もままなりません。
9分に追加点を奪われます。
また相手右サイド(日本の左サイド)からでした。チリは長いパス回しから右サイドに展開。最後は下がって受けたバルガス→イスラのマイナスクロス→マークを外して再びフリーになったバルガスでゴール。シュートはペナ外からでしたが、ブロックに入った冨安の足に当たってコースが変わり、ボールはゴールに吸い込まれました。
これで0-2。日本は厳しくなりました。
ただ、これで気を緩めたチリ代表。いかにも南米のチームでしたね。笑 日本が完全に舐められていたのもあるでしょうが。軽いプレーも増え、ここから日本が何度もチャンスを作ります。
12分柴崎クロス→上田
20分久保のドリブルシュート
どちらも決定機でしたが、1点を返すことができません。
21分には前田→安部、中島→三好の二枚替え。
24分久保運び→安部クロス→飛び込んだ上田
30分冨安斜めのパス→三好スルーパス→抜け出した上田
と、約20分間で4度のビッグチャンスを作りましたが、最後の精度が足りず得点できません。
やはり、久保や三好が前を向いてボールを持つとチャンスが生まれます。上田も動き出しは抜群なんですけどね。今日はフィニッシュがダメな日でした。
そうこうしてると、やはりチリも黙っていませんでした。
37分、またまた相手右サイドにやられました。中山が深い位置でアランギスに競り負けると、クロスに飛び込んだのはサンチェス。これで0-3です。
38分にはサンチェスのスルーパスに抜け出したバルガス。飛び出したGK大迫をあざ笑うかのようなループシュートで4点目を喫しました。連続失点で完全に勝負あり。
ロスタイムも含めて残り10分も、巻き返す事はできませんでした。
試合はこのまま終了。0-4です。まさに惨敗でした。
★個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)
GK大迫敬介 4.5点
3つの失点はノーチャンスで、ボールを持ったら落ち着きもありました。ただ、4失点目の不用意な飛び出しは頂けなかった。広島でのプレーぶりは全く知らないので、この試合だけで判断する事はできませんが…。
どうでしょう。GKでオーバーエイジ枠は使いたくありませんしね。次の試合に期待です。
CB植田直通 5.5点
高さ、強さの面で良さは見せました。4失点したので低めの評価にしていますが、悪くなかったんじゃないですか。久しぶりにプレーを見ました。
CB冨安健洋 6点
不安定な左サイドのせいでつり出されたり、守備範囲が増えて大変でした。それでもこの人に限っては及第点くらいの評価は与えたいです。守備面はもちろん、ビルドアップにも安定感がありました。
4失点目は良くなかったですけどね。両CBはある程度の出来だったと思います。
RSB原輝綺 5点
悪くなかったとは思うんですけど…。戦えてはいましたが、ボールを持っても無難なプレーに終始。攻撃で見せ場を作ったのは前半抜け出した一度だけでした。
例えば、室屋や酒井宏らと比べると全体的なクオリティー不足は否めません。
LSB杉岡大暉 5点
ほぼ常に数的優位を作られるなか、必死の対応をしました。いい選手ですね。市船時代のセンターバックのイメージが強かったんですが、良いサイドバックだと思います。
このサイドはユニットとして機能していなかったので低めの点数ですが、杉岡自身が評価を下げたとは思いません。
MF中山雄太 4点
厳しいですね。1.3失点目の原因になりました。前半早い時間にもらったイエローカードも余計でした。
ボールを持った時のうまさはあるんですけど、ダブルボランチの一角として戦えるかと言われれば難しいと思います。
MF柴崎岳 6点
前半は特に別格でしたね。守備では、この人がほとんど大事な局面で戻って防いでいました。さすが、フル代表でも主力を張るだけあります。
後半はさらにスペースができて、疲れとともに存在感が薄れました。
MF前田大然 5点 (後半21分OUT)
スピードを生かした“らしい”突破は後半の1度だけ。おとなしかったですね。解説の水沼さんも言っていましたが、もっと積極的に縦に仕掛けても良かったと思います。
MF中島翔哉 4点 (後半21分OUT)
もちろん、上手かったですよ。ただ持ちすぎ、奪われ方が悪すぎ、何より守備サボりすぎ。私が監督なら前半途中で交代させています。
森保監督の指示で、“あえて残ってカウンターの狙い”だったんでしょうけどね。それにしても簡単に自分のマークを放しすぎです。あんなにサボるなら攻撃面でメッシ級の活躍を見せないといけません。
MF久保建英 5.5点
キラリと光るものは見せてくれましたが…。という感じです。ボールロストも多かったですし、何よりパスが“ちょっと”ズレるんですよね。これはFC東京での試合でも感じていた事です。
あとは味方選手との距離感が遠かった。これは久保だけの責任ではありませんが。個人的には、トップ下ではなく右ワイドでプレーさせた方が生きると思います。
FW上田綺世 5点 (後半34分OUT)
ボロカス言われていますが、良い選手だと思いますよ。まともに1試合通して見たのは初めてですが、身体も無理の効くタイプですし、抜け出しのセンスもあります。
大学生だからとかいう理不尽な批判もあるらしいですが、皆さんこの人の法大でのプレーや、アンダー世代でのプレーをまともに見たことありますか?
私は正直ほとんどありませんし、知らない人も多いでしょう。もちろん、4度の決定機を決め切れなかったのは批判されるべきですが、バカにしたりボロカス言ったりするのは無しだと思います。
私はこのコパ・アメリカ後に総括して評価したいと思います。
○交代出場
MF三好康児 5点 (後半21分IN)
上田に出したスルーパスが唯一の見せ場。相手の足が止まっている時間に投入されましたが、そこまで違いを見せることはできませんでした。
MF安部裕葵 5点 (後半21分IN)
三好と同評価です。インパクトがあったのは、左サイドから上田に向けたグラウンダークロスくらい。もう少し試合の流れを変える積極的なプレーが見たかったです。
FW岡崎慎司 採点不可 (後半34分IN)
持ち前のエネルギッシュさは注入しましたが、際立った働きはありませんでした。
★トピックス
・【日本】問題だった左サイドの守備
まず大問題だったサイドの守備です。特に左。中島が監督の指示(チームの戦術)で意図的に前線に残っていたのか、ただサボっていたのかは分かりません。(おそらく前者)
それにしても、この試合の2,3失点目は左サイドを崩されたのが原因でした。1失点目のコーナーのキッカケも左サイドです。
どんな状況だったのか。図にして分かりやすくまとめます。

本来であれば、常に上(図1)のような局面になっているはずです。最低でも数的同数。遠いサイドのDFも合わせると守備側の方が人数は絶対多いはずです。
ただこの試合、中島はほとんどの局面でマッチアップするチリの4番イスラを放していました。一度はアプローチに行くんですが、イスラが攻め上がると自分は下がらずに中途半端な位置に残ったままなんです。
顕著だったのは2失点目のシーンです。


相手の長いパス回しで、日本は完全にリトリートして(引いて)守っていました。そんな局面でも、中島はイスラのマークを放したまま。結局はそこで数的不利を作られた影響でDFラインが下がりました。これで一瞬フリーになったバルガスのダイレクトシュートがズドン。
これはどうなんでしょう。森保監督に直接聞いてみないと分かりませんが…。どこかの記者1人くらい聞いてないんですかね。「中島を前線に残していたのは監督の指示ですか?」って。
日本代表はチャレンジャー(弱者)であるはずです。まず考えるのは守備であるべき。これは東京五輪でも変わりません。
前線からのプレス、リトリートした守備の二つを使い分けて、ショートカウンター、ロングカウンターからゴールを狙う。現実的に考えてこれしかないはずなんです。まずは“しっかりとした守備”ありきじゃないんですか?
あれだけサボっていいサイド(ウイング)は世界でもメッシかネイマールくらいです。当たり前ですが、中島はそのレベルの選手ではありません。
どうするつもりなんでしょう。次の試合でもう一度しっかり確認します。
・【日本】前線からの守備もチグハグ
前線(上田,久保)からの守備もチグハグでした。この試合、基本的に相手両CB+DMF計3人に対して、上田,久保が2人でスライドしながら守る形を取っていました。ただ、これが全くハマらなかった。下の図4の形です。

まぁ、この守り方もオーソドックスではあるんですけど、2人のユニットとしてうまく守れている印象は全くありませんでした。
全体的に見ても、前線からのプレッシングがハマってショートカウンターからチャンスを作れたのは前半44分、柴崎のスルーパスから上田が抜け出したシーンくらいでしょう。
相手DMFの位置まで柴崎か中山がつり出されて、相手に大きなスペースを与えたシーンもありました。
上の図4のような形が悪い訳ではありませんが、あれだけハマらなければ考え直す必要もありそうです。
例えばですが、下のような図5のような形です。

シンプルですが、2人を完全に横並びにしてスタート位置を下げることで、少しは安定すると思います。敢えてある程度の位置まで運ばせて、相手のスペースを消すのも狙い目です。
まぁ、中島の守備も前線からの守備も、次の試合に向けて森保監督がどう修正してくるか注目ですね。
★最後に
力が落ちていると言われていたチリ代表ですが、やはり強かった。ビダルも圧倒的な存在感でしたね。
日本代表に関しては、この1試合だけで判断するのは難しいです。難しいですが、この試合に限って言えば惨敗。東京五輪に向けても、ちょっと厳しいと思ってしまいました。
とりあえず、次のウルグアイ戦は引き分け以上が必要です。グループステージはあまり偉そうなことを言わずに見守りたいと思います。