リヴァプール戦1stレグのマッチレビュー後編です。前編では【試合の振り返り】と【選手評価】のみでかなりのボリュームになりました。今回の後編では、試合のトピックスや両チームの細かい戦術的な事を書いていきたいと思います。
前編を読んで頂いているという前提で話を進めていきます。まだの方はぜひ↓↓
それではいきます。
★試合分析
どうやったら分かりやすくお伝えできるか。悩みましたが、時間の経過に合わせて6つのトピックスを挙げることにしました。これを中心に解説していきます↓↓
○前半
①メッシ対策(リバポの守備)
・ファビーニョ+1人
②優位性を作ったコウチーニョの左サイド(バルサの攻撃)
・ジョー・ゴメスを引きつける動き
・リヴァプール守備のズレを生む動き
・有効だったラキティッチの“運び”
③★試合を変えたヘンダーソン投入(リバポの守備)★
・封じられたバルサの左サイド
・右寄りのファビーニョ
・ミルナー、マネの守備負担
○後半
④15分間圧倒したリヴァプール(リバポの攻・守)
・前に急がず縦横の幅を広く使う
・GKにうまくプレスをかけるワイナルドゥム
・攻撃時のヘンダーソンのポジショニング
⑤★2つのウィークポイントを消したセメド投入(バルサの攻・守)★
・セルジ右、ビダル左 安定した守備
・中盤で輝いたセルジ・ロベルト
・ブスケツの微調整
⑥神様がいたバルサ、いなかったリヴァプール
それぞれ、図を使えるところは使いながら、解説していきたいと思います。
とはいえ、正直、これを全て説明していたらキリがありません。サッカー好きでも間違いなく途中で飽きます。笑
上にまとめた6項目、そして前編を読んで頂いただけでも、私の言いたいことは大体分かってもらえると思います。笑
ということで、これから下は暇な人だけ!できるだけ長くならないようにします!
ちなみに、前編の試合振り返りも6つの時間帯に分けてあり、基本的にそれと連動するように6つのトピックスを出しています。良かったら一緒に見てください。
①メッシ対策(ファビーニョ+1人)
ここはあまり大したことではありません。どのチームも頭を悩ませるメッシ対策。クロップは、ファビーニョにそのタスクを託しました。
とはいえ、実際にファビーニョはほとんどメッシを止められませんでしたね。ただ、メッシは多くの時間で封じられていた。珍しく、ドリブルを引っ掛けられることも複数回ありましたね。どういうことでしょうか。

上の図1をご覧ください。ファビーニョは単独ではメッシを止められませんでしたが、ほぼ間違いなく人が密集する中央へ誘導しました。ファビーニョ+1ないし2の状況を作り、メッシを止めていました。そういう意味では、ファビーニョはそのタスクをしっかりこなしていたと言えます。
これは、今季リーガ後半戦でマドリーがメッシ対策に用意したものと同じです。ファビーニョのところがカゼミーロでした。
バランスを崩して前に出てからは、メッシに中央で前を向かれる場面も増えましたが、ある程度の成果は出ていました。
②優位性を作ったコウチーニョの左サイド
後半はミスが増え、ブーイングも受けたコウチーニョ。ですが、この試合前半は間違いなく攻撃の中心になっていました。ジョー・ゴメスを引きつけ、左サイドで相手守備のズレを生む動きを繰り返しました。

リヴァプールは前半、“メッシから遠い側”のバルサの左サイド方向にボールを追いやる守備をベースにしていました。その時の状況が、上の図2のような形です。
クロップからすると、このバルサ数的優位(4対3)の状況でも、ミルナー、サラーの運動量、ファビーニョやワイナルドゥムのスライドでボールを奪えると考えていたのでしょう。ですが、甘かった。

コウチーニョが上下左右にうまく動くことで、ジョー・ゴメスをほぼ釘づけにします。これで状況は4対3から、ラングレ、アルバ、ラキティッチVSサラー、ミルナーの3対2になります。上の図3のような形ですね。この広いスペースで3対2の状況は、いくら運動量が多くて頭の良いミルナーでも厳しい。バルサは左サイドから相手のプレスを脱出し、メッシが中央で前を向いてボールを受ける。というシーンを何度か作り出しペースを握ります。ブスケツがあまり左に寄らず、ワイナルドゥムを自分に引きつけていた。という点も見逃せないポイントです。
*図3の中、文章中の「釘づけ」が「釘ずけ」となっています。読者様の指摘で気がつきました。恥ずかしい。文章中のものは直しましたが、図の変更は面倒くさいのでこのままにさせて下さい。以後気をつけます。
・有効だったラキティッチの“運び”
この局面でもう一点、有効だったのがラキティッチの運びです。
この状況は、“バルサの数的優位だけどプレッシャーはかかる場面”です。自陣深くで、相手の全力プレスを受けるんですから、並のチーム、選手たちなら引っかかりることも多いはず。ましてや相手はリヴァプールです。クロップからしても、“この局面なら取れる”という判断で挑んできているんですからね。
そんな中、ラキティッチは全く動じませんでした。なんなら、中央で受けて前を向き、少しドリブルで“運び”を入れて相手のズレを生み出すシーンが何度かありました。本当にレベルの高い選手です。(めんどくさいので図にはしません)
③★試合を変えたヘンダーソン投入★
このように、開始から約25分間はバルサペースでした。リヴァプールも単発でチャンスを作っていたシーンはありましたが、肝心のプレッシングはそこまで機能していなかった。
ここで試合を変えたのが、ヘンダーソンの投入です。リヴァプールとしては、ナビ・ケイタが負傷するというイレギュラーな形での交代でした。ただ、この交代で試合が一変します。(投入直後にバルサが先制したんですけどね)

フォーメーションは、このようになりました。(図4)
ヘンダーソンが右インテリオールに入り、ミルナーが左に移った形です。
この時間から、急にバルサの左サイドが封じられます。
ポイントは、
・右寄りのファビーニョ
・ミルナー、マネの守備負担
この2つです。

上の図5のような形になりました。図2.3との違いは歴然ですね。まず、サラーは少しだけラングレにスペースを与え、ボールをバルサ左サイドに誘い込みます。(メッシから遠い左サイドに追い込むのは最初と同じ) そこからは、ファビーニョがラキティッチをマークし数的同数の状況に。ここで囲い込むことにより、バルサのビルドアップを無効化しました。
ここでもう1つポイントになるのが、バルサの右サイド。ファビーニョが完全に右寄りにポジションを取ったことで、このサイドではバルサの数的優位が生まれます。メッシが落ちればロバートソンがついてきますが、それでもリヴァプールからすると数的不利。ただここはさすがリヴァプール。というか、ミルナーとマネが素晴らしいポジショニング、運動量でこのスペースでの優位性を与えませんでした。
このポイントだけで言うと、“ビダルのビルドアップ能力の低さ”という点がバルサにとってマイナスに働きました。
こんな形でバルサはビルドアップ能力を奪われました。ペースは徐々にアウェーのリヴァプールに。そして後半、プレッシングでもう1つ変化を加えたリヴァプールがバルサに襲い掛かります。
④後半15分間圧倒したリヴァプール

前半残り15分から機能しだしたプレッシングに加え、クロップは“テア・シュテーゲンにまでプレッシングをかける”ことで勝負をかけてきました。
このワイナルドゥムのプレッシング、単純なようでとてもレベルが高かった。この状況でブスケツにボールが通ると、リヴァプールのプレッシングはほぼ無効化されます。ただ、1度もここを通されることはありませんでした。
これで、バルサのビルドアップをシャットアウト。セカンドボールをことごとく拾い、ポゼッション率を高めていきました。
それに加えて、リヴァプールは攻撃にも変更を加えました。前に急がなくなったんです。
縦横のピッチ幅を使ってバルサの守備網を広げます。バルサも攻撃→回収は得意なチームですが、遅攻には弱い。メッシ、スアレスが守備をしないので、実質8人+GKで守っているようなものです。
加えて、右サイドバックのセルジ・ロベルト、左ハーフ(ウイング)のコウチーニョは守備が得意な選手ではありません。
「ヘンダーソンが高い位置を取り、ワイナルドゥムが下がる」など、ブスケツ脇のスペースも使われはじめ、至る所で質的優位を作り出されます。
この時間帯(後半開始〜15分)、バルサは苦しかった。正直、いつ失点してもおかしくない状況でしたが、守護神テア・シュテーゲンと相手の決定力不足に救われました。
そんな中、バルベルデが動きます。
⑤★2つのウィークポイントを消したセメド投入★
ミスの増えたコウチーニョに変えて、セメドを投入。

フォーメーションはこうなりました。セメドが右サイドバックに入り、セルジ・ロベルトが右のハーフ、ビダルが左に移りました。この交代が本当にハマりました。
ここまでバルサが苦しんでいたのは、セルジ・ロベルトVSマネ、J・ゴメス(ヘンダーソン)VSコウチーニョの2つの局面で優位性を与えていたからです。
ただ、この交代で一気に2つのウィークポイントが消えました。セルジ・ロベルトは中盤としては守備力が高い(頭も良い)方ですし、ビダルに関しては言うまでもありません。
攻撃面でも、ボール扱いに長けるセルジ・ロベルトがメッシの近くで良いポジショニングを取ったことで再びポゼッションをできるようになりました。解説の戸田さんが言っていたように、ブスケツも少しポジションを上げてビルドアップに加わり、バルサは一気に落ち着きを取り戻します。
⑥神様がいたバルサ、いなかったリヴァプール
ここからは理屈抜きです。2点を取ったメッシがいたバルサに対し、リヴァプールは39分にマネ、フィルミーノ、サラーが連続でチャンスを迎えるものの決め切れず。
ピケを中心としたバルサDFを崩すことができず、結局3-0で試合は終わりました。
ただ、2得点目はビダルの守備から生まれたゴールですし、後半20分以降、リヴァプールにほとんどチャンスを作らせなかったバルサの守備はバルベルデの交代策が作り出したものです。
最後に
支配率はバルサ48%リヴァプール52%。内容的には苦しんだバルサ。それは間違いありません。
ただ、リヴァプールがグッドゲームを演じたように、バルサも素晴らしい試合を繰り広げました。運良く3-0で勝ったのではない。3点差がつくほど実力差があるとは思いませんが、必然の勝利だったと思います。
この試合、レビューを書くために4回くらいフルで見返しましたが、バルサにとっては会心の勝利と言っても差し支えない内容だったと私は感じています。
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。(笑)
2ndレグも楽しみましょう!