【マッチレビュー】18〜19シーズン/リーガ第31節/バルセロナVSアトレティコ・マドリード/2−0

スタメン GKテア・シュテーゲン DFラインは右からセルジ・ロベルト、ピケ、ラングレ、ジョルディ・アルバ  中盤はピポーテにブスケツ、右インテリオールにラキティッチ、左にアルトゥール  3トップは右からメッシ、スアレス、コウチーニョ

両チームのスタメン

ベンチ シレッセン ウムティティ ムリージョ セメド アレニャー マウコム ボアテング

★試合の流れ

両チーム大方の予想通り、現状のベストメンバーを揃えました。ホームのバルサはピケ、ラキティッチがスタメン復帰し、3トップはメッシ、スアレス、コウチーニョ。

勝利必須のアトレティコは中盤にボランチタイプの4人を起用。2トップはグリーズマン、ジエゴ・コスタです。

○前半

試合開始から気合を見せたのはこの試合で勝ってリーガ優勝を決めたいバルサ。キックオフからボールを後ろに下げずに、うまくボールをつないで前進します。最後は左サイドを深くエグったアルバの折り返しがクリアされるも、やはり大一番のバルサは強い。1プレーでそう感じさせる立ち上がりを見せます。

それでもやはり、アトレティコもさすが。しっかりと守備ラインを形成しつつ、ボールを持ったらキープしつつゆっくり攻める。そんな戦い方です。勝ち点3がマストの試合ですが、シメオネは焦らず、いつも通り質の高いサッカーでバルサを苦しめようとしてきます。

両チーム合わせて最初のビッグチャンスはバルサでした。

14分、中央でフリーでボールを持ったメッシからアルバへのロングスルーパス。オンサイドで完全に抜け出したアルバはワントラップからシュートを放ちますが、オブラクの飛び出しも良かった。シュートは左ポストに当たり先制点とはなりません。

27分もバルサです。DFを背負いながらラングレの縦パスを受けたスアレスがダイレクトでフリックします。良い形で前を向いてボールを受けたコウチーニョはワンタッチでゴディンをかわして右足シュート。決定機でしたが、これもオブラクが見事な反応でセーブします。

この直後、試合の展開を大きく変える事件が起こります。28分、ジエゴ・コスタが主審への抗議(暴言)で一発退場。アトレティコは残り約60分を10人で戦うハメになりました。

加えてこの判定への抗議でゴディン、ヒメネスに対してもイエローカードが提示されます。勝つしかないアトレティコにとっては最悪の展開です。このシーンの詳しい解説は下のトピックスで取り上げます。

優勝の望みをつなぐため、10人でも勝たないといけないアトレティコ。35分、シメオネは右サイドバックのアリアスに代えてアンヘル・コレアを投入。トーマスを右サイドバックに下げます。フォーメーションを4-3-1-1にして、勝ちに行くという意志を明確に示します。この時のフォーメーション図はこちら↓↓(図2)

図2

意外にも、ジエゴ・コスタ退場の影響を大きく受けたのは数的優位になったバルサの方でした。ここまで約30分間、素早いネガティヴトランジション(攻→守の切り替え)と守備の高い強度、テンポの良いパス回しで試合を支配。ところが、“ボールを持ってから考えられる余裕が出来てしまった”影響でリズムが狂いました。

アトレティコもとりあえずは完全に守備に専念したため、ゲーム自体の強度も下がってしまいました。いろんな意味で残念。前半残りは試合が動かず、ハーフタイムを迎えます。

○後半

両チーム、ハーフタイムでのメンバー変更はありません。

アトレティコは後半からコレアを右のサイドに落とした4-4-1にフォーメーションをチェンジ。まずは守備。カウンターかセットプレーでなんとか1点。という戦い方を明確にします。

ボールは持てるものの、攻めきれないバルサ。メッシの個人技以外に活路を見出せません。ジリジリと緊張感のある展開が続きます。

ここで先に動いたのはシメオネ。13分、フェリペ・ルイスに代えてモラタを投入。両サイドバックがトーマス、サウールという超攻撃的なフォーメーションです。

17分にバルサはこの日3度目の決定機。メッシがドリブルで長い距離を運び、最後はスアレスに優しいパス。スアレスがダイレクトでシュートを放つも、オブラクが見事に距離を詰めてセーブ。さすがです。

バルベルデも動きます。18分、アルトゥール→マウコムの交代。メッシがトップ下(自由)、マウコムが右ウイングに入り、ラキティッチ、ブスケツがダブルボランチを組むこちらも攻撃的な布陣を組みました。この段階での両チームのフォーメーション図はこちら↓↓(図3)

図3

結果的にマウコム投入は大正解でした。停滞していた攻撃に躍動感が生まれ、バルサが再び攻撃のリズムを作り出します。

24分、中央でボールを持ったメッシから、コウチーニョ→メッシ→スアレスとつながり、最後はメッシの左足。オブラクの弾いたボールに対して、反応したマウコムが左足ボレーを放つも、これもオブラクがキャッチします。鉄壁のオブラク。

アトレティコもさすが。10人でもしっかり集中を切らさず、カウンター、セットプレーから惜しい場面を作りかけます。バルサの選手、スタンドの観客、私たちにとっても緊張感のある展開になってきます。後半残り25分は特に面白かった。

バルベルデはこの展開をどう読み取り、判断したのでしょう。リーガ優勝のことを考えるなら、バルサは正直引き分けでもOK。ただ相手は10人。このままスコアレスドローに終わると、悪くは無いもののモヤモヤが残りそうです。

35分コウチーニョ→アレニャー、39分セルジ・ロベルト→セメドの交代。私はこのメンバー変更を、選手たちに対する「引き分けでOK」というメッセージと感じました。しっかりとフォーメーション的にもバランスを取り、走れる選手の投入です。

ただ、ここで「いやいやボス、勝ちに行きましょうよ」と。「俺たちは行けますよ」と。そんなプレーを見せてくれたのはバルサが誇るギガクラック2人でした。

40分、左のアルバから良い形でボールを受けたスアレス。マークに付いていたトーマスが一瞬のスキを見せました。守備の距離感が遠い。スアレスは2つのタッチでシュートモーションに入り、右足を振り抜きます。インフロントで外から巻いたシュートは守護神オブラクの前でワンバウンド。左ポストをかすめたボールはゴールに吸い込まれます。

圧巻のゴラッソ。1ゴール以上の価値がある得点です。スアレスはユニフォームを脱いで警告をもらうおまけ付き。しっかりウエスカ戦で出場停止です。問題なし。むしろナイス。

それなら俺も!と黙っていないのはメッシ。わずか1分後の41分でした。

ラキティッチのスルーパスで完全に裏へ抜け出します。ドリブルでゴールに近づくメッシ。必死に戻ったヒメネスに一度は引っかかりますが、ボールは渡さず。最後は得意な形です。中央に切り込みながら、DFのタイミングをずらし、GKをあざ笑うかのような逆を取るコロコロシュート。

この試合、そして長いリーガが決まった瞬間です。バルベルデも珍しく大喜び。優勝を確信したカンプ・ノウは「カンピオーネ、カンピオーネ」の大合唱です。このまま試合は終了。2-0の完勝でした。

★個人採点と寸評(採点は10点満点で平均は6点)

GKテア・シュテーゲン 7点

ほぼ出番なし。常に落ち着いて、冷静に対処しました。ポゼッション面でも問題なし。

CBピケ 7.5点

やはり存在感は別格。高さ、強さ、うまさ。全てで違いを見せました。相手が10人でマイボールの時間が長い中、最後まで集中を切らしませんでした。

次のウエスカ戦は累積で出場停止。問題なしです。

CBラングレ 7.5点

前の試合から改善。やはりピケとのコンビは安定します。DFリーダーになっていってほしい。

RSBセルジ・ロベルト 6.5点(後半39分OUT)

前への推進力、DF面での強さを見せました。いなくてはならない存在です。

LSBジョルディ・アルバ 7.5点

ファーストチャンスを決めていれば…。ただ攻守で貢献しました。スアレスのゴールをまた抜きパスでアシストしました。

MFブスケツ 7点

ビッグゲームでの安定感は抜群です。相手ボールになってからの回収の起点にもなっていました。いつも通りです。

MFラキティッチ 7.5点

マウコム投入までは右サイドの大きなスペース、投入後は左ボランチに入りさらに大きなスペースを埋めました。メッシの得点もキッカケはこの人のスルーパス。来季もいてほしい。

MFアルトゥール 6.5点(後半18分OUT)

底は脱した感じでしょうか。これまでの2,3試合と比べるとパフォーマンスはかなり改善されました。厳しいプレッシャーの中でもボールを失わず、ビルドアップを循環させました。得点が欲しい場面でマウコムと交代させられました。

FWメッシ 8.5点

スアレスの得点以外、チャンスは全てこの人から生み出されていました。ビッグゲームということもあり、開始からエンジン全開。守備でも頑張っていました。ボールを持った時のプレーはやはり異次元です。

あとはとにかくコンディション。リーガの優勝、得点王、アシスト王はほぼ決定しています。CLだけに標準を合わせてほしいです。

FWコウチーニョ 6.5点(後半35分OUT)

前半は特に素晴らしいパフォーマンスでした。ボールを引き出すポジショニング、ボールを持った時のキレ、良い感じじゃないですか。あの決定機でゴールを決めていれば…。デンベレは復帰間近で、マウコム、アレニャーもアピールを続けています。相変わらず多い簡単なボールロストが無くならなければ、CLでのスタメンは難しいか。

FWスアレス 8.5点 ★MOM

個人的MOMはこの人です。もちろんメッシも素晴らしかったですが、あのゴール。今のところ、今シーズン最も大きな意味を持った得点でしょう。しっかりイエローをもらって、次のウエスカ戦は出場停止です。そのあたりも抜け目無い。

○交代出場

FWマウコム 7.5点(後半18分IN)

いやぁ、マウコムですよ。この人の投入でガラッと流れが変わりました。もう立派な切り札(主力)です。スタートのポジショニング、スピード、技術。ボールを持った時の判断にもミスがありませんでした。何か持っている選手です。カンプ・ノウも彼を認めて、期待しています。CLのスタメンは難しいかもしれませんが、出場機会はあるはずです。

MFアレニャー 6点(後半35分IN)

少ないプレー時間でしたが、カンテラ出身の若手がこのビッグマッチで、得点、勝利の瞬間にピッチ上にいる。今のバルサにとってはとても大切なことです。プレー内容も悪くありませんでした。

DFセメド 採点不可(後半39分IN)

セメド投入→スローイン→スアレスのゴール。ある意味ラッキーボーイ的な存在でした。

★トピックス

・リーガ優勝決定(現実的に) ここからは全てをCLに

リーガは残り7試合。2位アトレティコとの勝ち点差は11に開きました。直接対決でも勝ち越したため、同勝ち点ならバルサの優勝です。というか、そんなまどろっこしい計算をするまでも無く、優勝決定です。断言します。

これからの日程(リーガ)は、ウエスカ(A)、ソシエダ(H)、アラベス(A)、レバンテ(H)、セルタ(A)、ヘタフェ(H)、エイバル(A)

上位チームとの対戦もありません。レバンテ戦あたりで優勝が決まるでしょう。

となると、ここからはCL。何が何でもCLです。次のリーガ、ウエスカ戦はピケ、スアレスが出場停止ですが、完全ローテーションをして欲しい。ラングレ、アルバ、ブスケツ、ラキティッチ、アルトゥール、メッシは絶対休養。アウェーなので、招集リストから外してもらって構いません。

試合後のTwitterタイムラインも、次のユナイテッド戦というより、ウエスカ戦のメンバーが話題になっていましたね(笑)。バルベルデはやりかねないし、ファンにとっても注目ポイントなのでしょう。

メッシが「俺は出た方が良い(コンディション的)」。と言うならしょうがないですが。

とにかく、これからは第一にCL、第二にCL、第三にCLで考えましょう。この試合の勝利はそれだけ価値のあるものでした。

・全てをぶち壊したジエゴ・コスタの退場劇

テーマをこの試合に戻します。

私自身、審判の判定に関してはあまり多く話したくないタイプです。ただ、退場のシーン、ジエゴ・コスタが抗議するキッカケとなったアルトゥールとの接触はそんなに大したことありませんでした。ノーファウルもミスジャッジでは無い。暴言の内容、言った言わないは当事者同士しか分かりませんし、それが一発レッドに値するかどうかは私には判断できません。

それにしても、ジエゴ・コスタは軽率でした。最悪です。テンションが上がっているのも、ワンプレーに熱くなるのも理解できます。ただ、少なくともあの場面でそこまで言う(カードをもらう可能性のあるような発言をする)必要は全くありませんでした。試合が完全に変わってしまいました。

もちろん、応援しているバルサは優位に立てました。ただそれと同じくらい、熱いゲームをぶち壊されたという腹立たしさもあります。

・それでも闘ったアトレティコ 来季に向けて

それでもゲーム自体は緊張感を保ったまま進みました。これはバルサがリズムを落としたのもありますが、アトレティコが崩れなかったからです。さすがでした。

特にシメオネは、選手交代で勝ちに行く意志を明確にしつつ、サッカー自体はしっかり堅く、現実的なものに仕上げました。それを実行する選手たちもすごい。途中からサイドバックに入ったトーマス、サウールもゲームを締めてくれました。

最後はバルサのクラック2人を相手に力尽きましたが、やはり闘えるチームです。

今季終了後、チームは大幅な変革が予想されます。リュカの移籍は決定。ゴディン、フェリペ・ルイスも退団がほぼ確定しています。DFラインは全変更もあり得ます。

それでもオブラク、コケ、サウール、ロドリがいる。この日、バルサのファンから直接「来るな」の意志を伝えられた大黒柱グリーズマンも残留するでしょう。

レアル・マドリーも含め、この首都ビッグ2がこの時期に無冠決定というのは少し寂しいですが、大補強やらなんやら、期待しつつ見守りましょう。

★最後に

やはり、バルサのビッグマッチでの強さは異次元でした。昨季はここでローマ相手にまさかの敗戦。ただ今季は状況が違います。

選手層が厚い。この日はデンベレが不在で、ビダルも出場停止でした。それでも交代選手を含めて、アトレティコ相手に勝ち切れた。

ユナイテッドは強敵です。ただバルサは間違いなく格上。勝てば良いなでは無く、勝たないといけない相手です。

アウェーの1stレグは3日後。本当の戦いはここからです。楽しみですね!!

試合後のスアレス、メッシ
*スアレスのTwitterから引用


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